ロシアが柔道ルーツの格闘技「サンボ」で愛国心教育 ウクライナ侵攻と関係が…? プーチン大統領“支持母体”政党が推進
■プーチン大統領の支持政党に「サンボプロジェクト」
実は、プーチン大統領の支持母体である政党「統一ロシア」は去年7月、「サンボプロジェクト」を発足させた。ロシア教育省によると、「統一ロシア」総評議会のトルチャク書記は「毎年500の新しいサンボ道場を開設する」のだという。その目的については、こう語っている、「サンボが教えるのは“勝利の科学”だ。多くの人がこのサンボに親しめば、ロシアはより強く、安定したものになる」。 また、党のメンバーで全ロシアサンボ連盟のエリセーエフ会長も「教員養成課程にサンボの単位を含めるべきだ。若い世代に愛国心と精神、道徳の発達を促すことが重要だ」強調した。 愛国心――これはプーチン大統領が演説でよく使う“決めセリフ”だ。果たして、スポーツと政治を一体化させようという意図なのか。
■プーチン大統領「愛国心ほど強いものはない」
今年5月9日の「戦勝記念日」で、プーチン大統領の演説はこう締めくくられた。「祖国への愛ほど強いものは、この世に存在しない。ロシアへ、勇敢なる我が軍に、そして勝利に万歳!」 去年2月24日に始めたウクライナ侵攻は、すでに1年9か月に及ぶ。1年前に発表した「部分的動員」は、国民の間に思いもよらぬハレーションを引き起こした。多くのロシア人が“まさか自分が戦場に送られるとは思っていなかった”からだ。ロシアから国外に脱出する国民が続出し、議会では「愛国心が足りない」とする議論も沸き起こった。 こうした状況を受けてか、ロシア政府は今年9月の新学期から、ウクライナ侵攻を正当化する新しい歴史教科書を採用して、愛国教育の強化を始めた。プーチン大統領は、軍事侵攻は「ロシアを守るための戦い」だと主張し、「愛国心」という言葉を良く使うようになっている。
■保護者らにも浸透する「サンボは愛国心」
15日と16日の2日間、モスクワでは去年、完成したサンボの宮殿で「全ロシアサンボの日」大会が開かれた。11歳から17歳の子供たち400人が全国から集まり、勝敗を競った。見たところ、日本でも普通に行われるスポーツ大会のようだが、主催者は政党「統一ロシア」。会場で保護者らに、サンボと愛国心について尋ねてみた。 めいが大会に出場しているというクリミアの女性は「クリミア半島で何があったか知っているでしょう。サンボは愛国心。私たち家族には愛国心があります」と胸を張った。 イルクーツクの女性コーチは「『サンボが愛国心を育てる』という考えに同意します。プーチン大統領もサンボは優先事項だと話していますし」と答えた。 サンボ普及の目的が愛国心の育成で、それがウクライナへの特別軍事作戦へのアレルギーを消し去るためだとしたら…。オリンピック競技を目指していたサンボは今、戦時下の国策に組み入れられようとしている。