日本のブレーク・イーブン・インフレ率、円安進行下で過去最高に並ぶ
(ブルームバーグ): 外国為替相場の円安進行が引き続き物価上昇圧力となる中、日本のインフレに対する投資家の期待値を示す指標が過去最高水準に並んだ。
新発10年国債から物価連動債の利回りを差し引くことで将来の物価上昇予想を示すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は今年に入り約25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、8日に1.418%に達した。これは、日本が初めてインフレ連動債を発行した2004年までさかのぼったブルームバーグのデータによると、過去最高だった昨年11月6日と同水準だ。
豪ウエストパック銀行の金融市場戦略責任者、マーティン・ウェットン氏(シドニー在勤)は日本の「ブレーク・イーブン・インフレ率の上昇は恐らくエネルギー価格の高騰と円安によるものだろう」と指摘。インフレ期待の高まりは既に債券価格に反映されているものの、インフレが収まらなければ、「短期的には名目金利の上昇リスクが依然としてある」とみている。
日銀が3月にマイナス金利とイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を廃止するなど17年ぶりに利上げに踏み切ったにもかかわらず、円相場は同27日に対ドルで一時1ドル=151円97銭と約34年ぶりの安値を付けた。日銀の植田和男総裁は先週、為替は経済物価に影響する重要な要因とし、為替市場への動向や物価への影響を注視すると語った。
為替は経済・物価に影響する要因、市場動向を十分注視-日銀総裁
TDセキュリティーズのシニア金利ストラテジスト、プラシャント・ニューナハ氏(シンガポール在勤)は「われわれの感覚では、日銀が次の利上げのタイミングに安心感を抱く前に、市場はブレイク・イーブン・インフレ率の水準を押し上げる可能性が高い」と予測。春闘の結果、日本の賃金が上昇し、6月には所得税減税も控えていることから、「消費は上向くだろう」と言う。
流動性の低さがブレーク・イーブン・インフレ率の上昇を増幅させている可能性もある。ブルームバーグと年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、日銀のデータによると、インフレ連動債の発行残高はわずか11兆5000億円で、その29%はGPIF、41%は日銀が保有している。