子供たちの可能性を広げるPC教室の新しい形――ICT活用教育の最新トレンド
GIGAスクール構想によって児童・生徒1人に1台のコンピューターが整備され、コンピューター教室(PC教室)は役目を終えたかに思われた。だが、文部科学省は2022年6月に改訂した「学校施設整備指針」において、新時代の環境に合わせた教室の整備と活用を各学校設置者に求めた。そこでは「1人1台端末環境等の整備に伴い、コンピュータ教室については、教科・科目の内容に応じ、個別の端末では性能的に実現が困難な学習活動を効果的に行うことができる空間として捉え直した上で、(中略)個人やグループでの活動が可能な自由度の高い空間とすることが望ましい」としている。 【写真】事例を写真で見る つまり、GIGAスクール端末だけではできない学習をコンピューター教室で実現し、子供たちの可能性を広げる拠点として再活用するよう求めている。一部の自治体では、そうした動きが始まっている。コンピューター教室をリニューアル活用する事例を紹介しよう。
学びの幅を広げる教室
埼玉県の久喜市立砂原小学校は、インテルが全国の学校・大学で実証を進める「STEAM Lab」のプログラムによって、コンピューター教室を再整備した。インテルはSTEAM*教育を広めるため、パソコンメーカーなどのパートナー企業から協力を得て、高性能パソコンや3Dプリンターなどを提供している。2024年4月の時点で、高等学校と中高一貫校を中心に18の教育機関がSTEAMLabを設置している。 *科学( Science)、技術( Technology)、工学( Engineering)、芸術( Arts)、数学( Mathematics) 砂原小学校で「ゆめらぼ」と名付けられたSTEAM Labは、さまざまな教科で日常的に活用されているという。ここでは5年生総合の時間を見てみよう(図1)。 授業では目的に合わせた文書、具体的には文集を協働しながら作る。子供たちは複数のグループに分かれ、林間学校、校内音楽会、社会科見学など、それぞれ異なるテーマの文集作成に取り組んだ。写真の編集やレイアウト、文章の入力などはメンバーが分担して進めるが、制作するページを共有しているので、各自の操作がリアルタイムでページに反映され、全員が全体を確認できる。複数のマシンをうまく使いこなしている。同市内では久喜中学校も同様にSTEAM Labを導入した。 同市教育委員会 教育長の柿沼光夫氏は、「教科の学習を基本とする制度の中で、教科横断型の学習を実践するのは難易度が高い。教科の枠では収まらない学びを実現するのがSTEAM Labの狙い」と話す。「算数や理科、美術、音楽などの教科がコラボしながら学んでいくことで幅が広がる。今の日本に欠けている創造力の育成につながる」(柿沼氏)と、STEAM教育の成果に期待する。