活動休止の上田桃子「最初は苦労という苦労も知らず」「常に学びのゴルフ生活だった」「今一番は勉強をしたい」【会見一問一答】
3日に自身のインスタグラムでツアー活動休止を表明した
◆国内女子プロゴルフ 第35戦 伊藤園レディス 11月8~10日 グレートアイランド倶楽部(千葉県) 6769ヤード・パー72 【動画】止まりかけて「コロン」! 上田桃子が見せた超難ロングパット これが実際の映像です
今季の国内女子ツアーは残すところあと3戦。第35戦の「伊藤園レディス」が8日に千葉県のグレートアイランドCで開幕する。3日に自身のインスタグラムを更新し、「2024年シーズンをもって、突っ走ってきた足を、一旦止めてみようと思います」などとつづり、今季限りでのツアー活動休止を表明した38歳の上田桃子が会見に臨んだ。 一問一答は以下の通り。
―改めて次のステップに進むことについての説明を プロ生活が今年20年目だったんですけど、次へのステップにそろそろいく時期がきたんじゃないかと思ったので、SNSで発表させていただいた。 ―今回の決断はいつ頃から? 30歳過ぎたあたりから、毎年合宿を始める前に、今年1年やれる心技体があるのか考えながら、引退というよりはまずその1年できるかというのをいつも考えていたので、頭のどこかには30歳ぐらいからずっとあったんですけど、最終的に次に行こうと思ったのは、今年の日本女子オープンが終わったぐらいです。 ―きっかけは? 意外ときっかけとかはあまりなく、メジャーはやっぱり優勝したいとずっと思っていたので、しっかり準備をしてきたつもりでしたし、「日本女子オープン」が今年メジャー3試合目でしたが、それが終わったと同時に勝てなかったなと。今シーズンのことよりは全体的に振り返ったときに、今までの自分の準備の仕方が間違ってなかったかとか、いろいろ考えたときに、最終的に精一杯やれることは毎年やってきたので、ゴルフをやっている間は一度も年齢のことは気にしたことがなくて、38歳だからといって、距離も落ちてないし、むしろ1年1年上がっていましたし、やっているときは気にしてなかったんですけど、ただ次の人生を考えたときには、年齢的なことも含めて、今かなと思った感じです。 ―20年のプロ人生を振り返って 学びしかなかったと思っています。本当にやればできるという気持ちでいつもやっていたので、プロになってから最初は自分が思っていた以上の結果が出て、こんなにうまく行くんだなという風な立ち上がりだったので、最初は苦労という苦労も知らずに、やったらうまくいくなという強い気持ちでやれていたんですけど、アメリカに行って、たくさん失敗も経験して、なかなか思うようにいかない日があったんですけど、それでもうまくなりたいという気持ちがいつもあったので、逃げずに正面から向き合うことで、一つ一つ、なぜこれがこうなるのかという経験を元に成長できたと思っているので、常に学びのゴルフ生活だったなと思います。 ―上田プロにとってのゴルフとは? 人生長いので、自分の中のゴルフが人生にならないようにというのは、米国に行ったときからずっと思っていて、ゴルフだけが人生にならないためには、ゴルフで学んだことをこれから先、生かさなければいけないと思っているので、自分の中の教科書というか、こういうときはこうやって乗り越えていけばいいんだとか、正直うれしいとか楽しいという時間よりもきつい時間のほうがほとんどで、本当に心の底から笑える時って、勝った時ぐらいしかないので、自分が優勝した回数でいうと、出た試合の10分の1ぐらいしかないし、それ以外の日はほとんど考えていたので、ゴルフはこれから先、自分の中のきついときや悩んだときにこういう風にすればいいんじゃないかと一つの教科書というか、基準を残してくれたかなと思います。 ―プロ生活20年で印象に残っている大会は? 難しいですね。けっこう色んなことが思い出に残っているので、勝った試合も負けた試合もどっちが印象深いかと決められないぐらい、たくさん思い出があるので、一つに絞れないです。 ―後輩たちにひと言 自分で好きでプロになっていると思うので、私たちはけっこうジュニアの頃からずっとゴルフをやってきて、ゴルフは一人でやるのはなかなか難しい。小さい時は親にいわれてゴルフを始めた人も、プロになったら、それが自分の人生になると思うので、自分の人生に責任を持って、いつもチャレンジしてほしいなと思いますし、私自身はいい時も悪い時も逃げずにやってきたつもりなので、正面から向き合うことで分かる答えもあると感じてきたので、それがまたこうして、次のステップを迎えようとしているときに、それがよかったなと思っているので、正面から自分のゴルフに向き合ってほしいなと思います。 ―次のステップを具体的に 何も本当に決めてないんですけど、女性としても社会人としても、私はプロゴルファーとして生きてきた時間の方が長くて、結婚もしたので、そういう部分で考えると、何もできてないというか、その中で生きていくと考えたら、全然まだ知らないことばかりなので、逆にこれから自分が興味のあることとか話しながら、どういう道に進んでいいのかを考えていて、まだ何も決まっていません。決まったらお伝えしたいと思います。 ―SNSでのありがとうを伝えたいという思いは 本当に苦しい時間が結構20年の間の半分以上で、自分で決めてやっているので、なんで苦しむのかと思う人も多いかもしれませんが、やっぱりいつも強くなりたい、勝ちたいという気持ちはそんなに簡単なものではなかったので、ここにいるメディアの人にもたくさん支えられたなと思いますし、本当に生意気だった自分を少しずつプロとしての意識を持たせてくれたのは周りの人だと思うので、たくさんの人に感謝しかないと思います。 ―チャレンジしてみたいことは? ゴルフの技術というか、スキル的な部分はいつも向上したいと思っていたので、もう少し自分の中で感覚は分かりますけど、データだったり、理論的な部分で勉強して、後輩たちやジュニアだったり、指導にも興味はあるので、自分自身がメンタル的な部分で隙が多かったなと感じているので、その部分の勉強もしたいなと思っている。今一番は勉強をしたいなと思っています。 ―家族の反応は? 30歳を過ぎて、毎年もしかしたら今年になるかもとはずっと伝えてきての今年だったので、「ホントに?」みたいな感じでしたが、今回は本当にこれでと話したときは、あっさりしていたというか、続けてほしいと言われたことは一度もないので、自分がやめたいと言うとやめればという感じだったので、結構あっさりしていました。 ―今季はどのようなゴルフを見せたいか 今年一番、今までゴルフをやってきた中で、うまくなりたいというのが邪魔をしてなのか、技術的なところに走り過ぎてしまったのがあって、感覚的なところじゃなかった。今自分が持っている技術、感覚を全て出し切ることがなかなかできなくて、集中力も出なかったので、できないことをやろうとしたゴルフゲームではなくて、本能的なものも含めて、技術じゃない部分で戦いたいなと思います。 ―自分らしさとは? あきらめが悪いので、最後まであきらめずにチャレンジすることが今まで大事にしてきたので、アグレッシブにチャレンジしたいなと思います。 ―今後ツアーに戻る可能性は? こればっかりは本当に分からないです。今の段階ではないので、ただ、今の段階でないから、引退というよりは、プロになったときから、一生プロゴルファーだなと思っていたので、またもしかしたら今後戻りたいという気持ちになるかもしれないですし、今はそういう気持ちはないので、分からないから、引退という言葉を使わないほうがいいと思っただけで、今は考えにくいです。 ―新人選手から憧れられる存在になったが? すごくうれしいですし、「大丈夫か、私で?」と思いますが、自分自身より母親が一番うれしいんじゃないかと思います。いつも後輩が困っていたら、聞いて解決してあげるようにと常々言われていて、自分自身もそういう先輩がいたときはすごく助かったし、その先輩には今でも感謝していることが多いので、そういう存在に一人でもなれていたら、すごく嬉しいです。 ―この大会での思い出は? この大会はやっぱりすごい好きなゴルフ場で、けっこう成績もいいので、頑張りたいなという思いは強く、2週間オフだったので、そこでしっかりいいイメージで練習できていたので、ラウンドしながらも、ここはビタッとついたなとか、ここは嫌がって逃げちゃったなとか、そういういいイメージも悪いイメージも両方あるので、試合に入ってからもイメージを湧かせやすいかなとは思っていますけど、どの大会でも「やっちゃったな」はあるので、ここのコースでは、ああ、新人戦でも池ポチャしたなという感じです。 ―今週、来週で優勝したら最終戦は出るか? はい、最終戦に出れるように頑張りたいと思っています。 ―ツアーから離れてやりたいことは? 旅行をしたいと思いますが、イメージが湧かないんですよ。ゴルフ場にいない自分がいまだにイメージが湧かなくて、本当に今週、来週でどうやったら勝てるかしか頭にないんですけど、何もしない生活はほぼないので、12月に入ったらオフのことを考えて、そこから逆算してとなるので、何も考えずに過ごせる12月はどんな感じなのかなというだけで、やりたいことは特にないです。英語を勉強したいぐらいです。 ―他の選手からのアドバイスは? この決断に関しては、周りには相談していません。誰かの意見を聞いて参考になったとかはないです。ただ、SNSで発表する前に、仲のいい先輩には報告させてもらったときに、人生長いからねという話をしたぐらいで、ゴルフ関しては話をしていないと思います。 ―そろそろかなと思った時期は? 30歳ぐらいから毎年思っていました。今年かな、今年かなと。やめなかったのは、自分自身に対する可能性が消えなかった部分と、そこに対してアプローチしてくれるコーチの存在とか、頑張れる環境があったのはすごく大きいと思いますが、荒川先生(※)に会うタイミングも、けっこう自分の中では頭打ち食らっているかなと思っている時期でしたし、毎回もう無理だと思ったときに何かがあるというか、新しい発見があることもそうなんですけど、まだやり切ってはいないなと言うのが、1年1年続いて今に至っている感じです。 ※荒川先生=荒川博/王貞治を世界のホームラン王に育てたことで知られる野球指導者。その打撃理論をゴルフにも応用し、上田桃子もその薫陶を受けた。 ―プロとしての美学は? 私の中でずっとロールモデルにしていた人が2人いて、賞金女王をとった年にCMで(俳優の)上戸(彩)さんと共演させていただいて、それ以来親交があるんですけど、本当に年齢に関係なく変わらずに、自分自身に対しても本当に気さくで、でも仕事に関してはすごいプロフェッショナルで、なんかずっと自分は誤解をされやすいので、自分が名前を発して迷惑をかけたらいけないなと思い、話しませんでしたが、ずっとああいう人になりたいなと思わせるほどプロフェッショナルな人なので、歌手のAIさんもそうですけど、その2人をずっと自分の中では、こういう人たちが自分の中のプロフェッショナルだと思ったので、仕事に対していつも真面目に取り組んでいて、でも、人間味のあるやさしい人だったので、自分の美学ではありませんが、そこをいつも目指して、こういう風になっていけたらと思って、大事にしていました。 ―今後ジュニアや女子プロの育成をするのか? 本当に指導者になろうではなく、技術を向上させることは辞めても興味深いというか、だったらちょっとでも、ゴルフがうまくなることを勉強していきたいなと思っていて、それがどういう形になるのかまだ分からない感じなので、興味があるという段階で、何事も勉強したいのはあるので、やるのは得意でも見る力はないかもしれないので、まずは今勉強したいだけで、プランはないです。 ―ゴルフ以外の勉強は? 技術的なこともそうですし、体のことも勉強したいですし、メンタル的な、基本的に人間は思考でできていると思うので、どういうマインドで準備したりだとか、競技に入ることで自分のパフォーマンスを出しやすいとか、そういう心技体を全部勉強したいです。
上田 桃子(うえだ・ももこ)
1986年6月15日生まれ、熊本県出身。2005年のプロテストに一発合格し、同年の「LPGA新人戦 加賀電子カップ」で優勝した。07年に「ライフカードレディス」で初優勝を遂げると、「ミズノクラシック」など年間5勝を挙げて史上最年少21歳156日(当時)で賞金女王に輝いた。翌年の08年からは米ツアーにも挑戦したが、14年以降は主戦場を国内ツアーに戻した。21年6月に結婚を発表。翌22年の「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」でツアー17勝目を飾った。24年11月、自身のインスタグラムで24年シーズンをもってツアーから撤退することを表明した。ZOZO所属。
ゴルフのニュース編集部