DXの課題、過剰なツール/データで生産性低下のリスク、生成AIによる課題解決の取り組みも
生産性アップのツールで生産性低下につながるリスク
生産性を高めることを目的に導入するSaaSアプリだが、これが過剰になると、生産性低下を招く可能性があり、最適化の視点が求められる。 コーネル大学のEllis Idea Labが実施した調査によると、企業における社員はクラウドストレージ内の検索やメッセージアプリの検索などにより、1日あたり平均59分を無駄にしていることが分かった。またこの調査では、43%がさまざまなアプリケーションの行き来に時間を浪費していると回答、45%が生産性が下がったと回答したことが報告された。さらに、アプリケーションが多すぎるため、何が起こっているのか社内の最新情報をキャッチアップできないとの回答も48%に上った。 たとえば、社内でコミュニケーション/コラボレーションツールとして、Slack、マイクロソフトTeams、Zoomを使っていたとすると、どのスレッドに、誰がどのメッセージを残したのか、それを検索するだけでも多くの時間を要することになる。プロジェクト管理でも、部署・チームにごとに、異なるプロジェクト管理ツールを使用している場合、すべてのツールの仕様に慣れていないと、混乱や間違いのもととなり、生産性は大きく下がってしまうことになる。
生成AIで解決目指す動きも
SaaSアプリの急増に伴いSaaSアプリを管理するためのツールに対する関心も高まりつつある。そんな中、生成AIを活用したソリューションを開発しているとして注目を集めているのが、Y Combinatorが支援するスタートアップGoLinksだ。このほど、企業の内部データやツール間における検索の効率化を目指すAI搭載の検索エンジン「GoSearch」を発表、昨今のSaaSアプリ過多のよる生産性低下の問題に取り組み姿勢を明らかにした。 もともと同社は、独自の検索アルゴリズムに定評のあったスタートアップ。GoSearchは、生成AIを統合し、検索機能を大幅に向上させたプロダクトとなる。企業内のデータ検索に関して、従来の検索ツールが関連性や機密性に関わらず、すべてのデータをインデックス化するのに対し、GoSearchは、全社員が利用可能なドキュメントのみをインデックス化するより繊細なアプローチをとっている。これにより、アクセシビリティを維持しつつ、セキュリティ/プライバシーを強化することが可能となる。 生成AIによる拡張機能としては、ユーザーがドキュメントを検索した際、その意図を理解し、必要に応じてコンテンツを要約したり、関連する情報を追加したりする機能が追加された。またセールスフォースやGoogle Workspaceなどの主要SaaSを含む100以上のデータソースのインデックスが可能で、目的の情報を探すために、何度も異なるツールを行き来することも必要なくなるという。 直近のアップデートとして、OpenAIの最新モデルGPT4-Turbo-Visionを活用したマルチモーダルな検索機能も追加されている。マルチモーダルな検索とは、テキストだけではなく、写真、スクリーンショット、メモ、URLなどさまざまなソースを検索入力として利用できる仕組みのこと。さまざまなユースケースが想定できるが、たとえば、製品開発チームが新しい製品のプロトタイプを作成し、その画像を入力情報としてGoSearchにアップロードすると、以前の類似プロジェクトを参照し、関連する市場調査レポート、競合他社分析、顧客フィードバック情報を提供するなどが考えられる。 DXに伴うアプリ過多/情報過多問題への関心の高まりとともに、GoSearchのようなAIベースの検索ソリューションが今後さらに増えてくることが見込まれる。
文:細谷元(Livit)