ステランティス、英での生産中止を警告-政府のEV販売義務付け巡り
(ブルームバーグ): 自動車メーカーのステランティスは、英政府が電気自動車(EV)の販売目標を引き下げない限り同国での自動車生産を中止する考えを示した。同社はEVのバン生産のため、数カ月前に英国の工場1カ所を改修したばかりだ。
ステランティスの英国担当マネジングディレクター、マリア・グラツィア・ダビーノ氏は25日、記者団に対し、ゼロエミッション車(ZEV)の販売目標は持続不可能だと言明した。英国では7月4日に総選挙が予定されているが、保守党と労働党のどちらが与党になっても、現在のEV販売目標を堅持する見通しだ。
英国は2024年について、各メーカーに対し新車販売の22%をZEVにするよう義務付けている。30年にはこの比率が80%に上昇する。バンについては、30年までに新車販売の70%をZEVとしなければならない。
英国、新車ZEV販売目標で柔軟な達成を容認-2030年に8割目標
EVの需要が減速していることから、ステランティスは目標達成のため値引きを余儀なくされるだろうと、ダビーノ氏は指摘。目標未達の場合、自動車メーカーには1台につき1万5000ポンド(約300万円)の罰金が科される。労働党は、総選挙で勝利した場合、このZEV販売目標を維持すると表明している。
ステランティスは昨年、エルズミア・ポートにある工場に1億ポンドを投じ、EVのみを生産する工場へと改修。同工場では「ボクスホール」や「シトロエン」、「プジョー」、「オペル」、「フィアット」といったブランドの小型EVバンを生産している。またロンドン近郊のルートンでは、中型バンを生産する。
ダビーノ氏は英自動車工業会(SMMT)が開催した国際自動車産業サミットで、「われわれはエルズミア・ポートとルートンの両方で大規模な投資を行ってきており、今後もさらに投資する考えだ」としつつ、「もしこの市場がわれわれにとって厳しいものになれば、他の場所での生産について評価を始めることになるだろう」と述べた。