「企業で考えたらとんでもない!」【裏金脱税】キックバック議員「逮捕が逃れられないこれだけの訳」
偽計行為によって脱税した場合は「10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金」
「昔から税務行政は『弱きをくじき、強きを助ける』と言われていて、実際そうなんです。零細事業者の確定申告が1万円違っているだけでも、税務署は厳しく追及します。 たとえば、フリーランスの個人事業主は、税務署から『申告の内容について知りたいので税務署に来てください』というような連絡を受けることがあるかもしれません。おそらく、ほとんどの人は真面目に応じるでしょう。でも、そんな要請は何の根拠もないから、放っておくに限ります。 税務署は本来、法律に基づいて税金を徴収しなければいけない。そして国民は、法律に基づいて納税することになっています。だから、税務署の調査を受けて追加の税金を払うよう言われた場合は、どの法律に基づいて追加の税金を払わなければいけないのか、根拠を確かめることが大事なんです。税務署は、根拠を問われるとあきらめることが多い。税務署の職員が一番、税法を知らないから。憲法を道具として使うことに慣れていないんです」 一方、税務行政が「強きを助ける」、つまり政治家に手ぬるいのには理由がある。 「なぜ政治家を放っておくかというと、財界や財務省が税法を作るからですよ。大企業優遇税制がほとんどですが。 日本の税法は、国会に提出されたら3週間ほどで衆議院を通過します。国会で賛成してくれるのは与党自民党の議員なのだから、税金の問題で追及しないで放っておけというのが税務行政のスタンスです」 裏金を得た議員が納税を免れていることに、国民は怒っている。脱税にあたるとすれば、罪に問われて然るべきだろう。 「偽計行為によって脱税した場合は所得税法違反、法人税法違反、消費税法違反で10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金に処されます。あわせて、追徴税額を支払わなければいけない。懲役に服して、議員も辞めるべきでしょう。 脱税となれば、国税庁は検察に告発する義務があります。告発を受けて検察は取り調べを行い、立件することになる。ただ、脱税は犯罪ですから、事実であれば国税の告発を待たずに検察が独自に捜査することもできます。 今回の裏金事件でボロ儲けしている議員が何の罪にも問われないのは、どう考えてもおかしな話です。これをどう変えていくかが、我々に与えられた課題であることは確かでしょうね」 「次の選挙では入れない」――。今、そんな声がSNSなどで上がっている。まずは、そこからかもしれない。 浦野広明(うらの・ひろあき)税理士、立正大学法制研究所特別研究員。1940年、北海道生まれ。’02~’11年、立正大学法学部教授・立正大学大学院法学研究科教授。’11~21年、同大学法学部客員教授。著書に『税務調査に堂々と立ち向かう』(日本評論社)、『税が拡げる格差と貧困』(あけび書房)、『税財政の民主主義の課題』(学習の友社)など。 取材・文:斉藤さゆり
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