トランプ氏再選でPFAS政策の行方は? 前回の任期中には飲み水の規制値を「先送り」していたが…
規制値は今年4月にようやく設定
飲料水に含まれるPFASをめぐる新たな規制が設けられたのは、バイデン政権下の今年4月のことだった。 PFOS 4ナノグラム PFOA 4ナノグラム ほかに、PFHxS、PFNA、PFBS、GenXの4物質も対象に加えられた。これまでの勧告値に代わり、遵守を義務づける規制値になった。 発表のセレモニーはノースカロライナ州フェイエットビルで行われた。ケマーズ(旧デュポン)の工場がある、汚染の象徴ともいえる町だ。 会場にはEPA長官だけでなく、州知事、NGOや市民の代表も顔をそろえ、代わる代わるスピーチした。旧デュポン工場によるPFAS汚染を暴き、汚染対策の象徴的な存在となったロバート・ビロット弁護士の姿もあった。 そして、遺族の女性が最後に演台に立ち、「過去は変えられないけど、未来は変えられる」と声を上げた。そして、規制強化の実現に欠かせなかったというEPA長官の名前を読み上げた。そして、拍手のなか、ふたりは互いに歩み寄ってハグをかわした。 それは、行政とNGOと市民がそれぞれの役割を果たしたことによって、この歴史的な転換点が生まれたことをうかがわせる光景だった。 一方で、登壇者のだれもが民主党の貢献について言及するセレモニーは、大統領選を前にした民主党のための演出のようにも映った。
米政府主導で浄化する仕組み
ところで、アメリカが世界でもPFAS規制でもっとも厳格な国の一つとなったのは、汚染の深刻さの裏返しともいえる。 米国防総省によると現在、アメリカ国内にある700カ所あまりの米軍基地・施設などでPFAS汚染が確認されている。このうち、約50カ所はすでに「スーパーファンド法」にもとづく汚染浄化プログラムの対象となっている。飲み水の規制とともに、PFOSとPFOAが同法の有害物質に指定されたからだ。 スーパーファンド法のプロセスは次のように規定されている。 ①予備評価・現場調査 ②修復調査・実行可能性調査(フィージビリティー・スタディ) ③修復計画・修復着手 ④修復措置・履行 ⑤長期的管理 しかも、汚染者が特定できなくても、汚染除去にかかる費用は政府が基金(ファンド)から拠出する。そして、有害物質を発生、所有、管理、輸送した責任者とそこに融資した金融機関に後に負担させる。 いわば、政府が主導して浄化を進める仕組みだ。