質問「神も仏も同じ存在なのですか?」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年11月20日)
神仏習合の特徴は、日本人の宗教観が非常に柔軟であったことにあります。冒頭に述べた例のように、日本人は、特定の宗教や教義に縛られることなく、さまざまな信仰を受け入れ、生活の中で自然に使い分けてきました。神道と仏教は日本人の心の中で別々の存在なのではなく、両方が調和し合う形で生活に組み込まれていました。 しかし、明治時代に入ると、新政府は近代化を進めるために「神仏分離」政策を強化し、「国家神道」と仏教を分けるようになりました。この政策によって、神社と寺院は分離され、仏教と神道はそれぞれ独立した宗教として位置付けられることとなります。現在、私たちが目にしている神社仏閣の姿は明治以降のものであり、それまでは神社と寺院が同じ敷地内に存在するのは珍しいことではありませんでした。 このように、神仏習合は日本人の宗教観がどれほど柔軟で多元的であったかを示しています。日本人は、宗教を生活の一部として取り入れ、異なる宗教が共存することを自然なこととして受け入れてきました。神道と仏教が共存し、互いに影響し合いながら発展した日本の宗教観は、他の国々とは異なる独自の宗教文化を形成する基盤となっています。
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