都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由
6月20日に告示された東京都知事選は候補者の「選挙ポスター」が物議をかもしている。ほぼ全裸の写真や風俗店のポスターが貼られ、一部候補者や政治団体が警視庁から警告を受ける事態に発展した。さらに、ある政治団体は候補者を乱立させ、そのポスター枠を事実上「販売」していることも波紋を広げている。“売名”など本来の目的とは異なる形で掲示板が利用されており、対策を求める声も出ている。では、ポスター枠を“買う”側は世間からの批判に何を思うのか。「55万円」でポスター枠を買った男性に取材した。 【写真】ポスターのQRコードを読み取ると誘導される画面はこちら * * * 「掲示板ジャックに参加したのは、都知事選の判断材料として有権者の皆さまに私個人の主張を伝えるためです。マスメディアの情報はどうしても偏りがちですし、(公の場で)一個人の意見が取り上げてもらえる場は限られています。こうして名もない一個人が主張できる機会を得られたので、私はお金を払ってポスターを出したのです」 こう語るのは、愛知県に住む50代の男性。候補者を擁立する政治団体に“経費”を払い、自身が作成したポスターを都内36カ所に掲示した。ポスターには、赤ちゃんが怒っている様子が写っており、「ダメ!一極集中。投票に行こう。東京を住みよい街に」というフレーズが記載されている。 「これは私の生後8カ月になる息子です。未来の子どもたちのためにも投票して(暮らしを)改善していこうというのが私の主張ですので、子どもたちの未来のために投票に行ってほしいという気持ちを込めて、わが子の写真を使いました」
■自らは立候補はしない理由 だが、道理としては、自らが都知事選に立候補して堂々と有権者に政策を訴えればいいはずだが、男性はなぜそれをしないのか。 「私が立候補すればいい、考える人はそういないのではと思います。人には能力がありますし、分相応ということもあります。私は緊張しやすいですし、人前でうまく喋れるタイプではありません。都民だったとしても立候補など全く考えられません」 では、実子の写真を使ってまで男性が有権者に知ってほしいという主張は何か。 「経済停滞、待機児童や出生率低下など多くの問題が東京一極集中に起因しています。それらを解消し、子どもたちの生活しやすい東京をつくってほしい。電車では通勤ラッシュで押しつぶされても我慢して、車でも渋滞していて時間に間に合わずイライラが募ります。高いビルや地面のアスファルトなど、街全体がコンクリートに囲まれていて熱がこもっています。車もエアコンも熱を放出し続けています。また、災害被害も人が多くなるほど甚大になり、大災害で救急車が出払ったら、人の命は救えません。大勢の人が混乱した状態では逃げ場もふさがれるでしょう。地価高騰で都心の新築マンションは1億円以上出さないと買えなくなっています。家賃も高く、ウナギの寝床みたいなところに住めば、閉塞(へいそく)感や圧迫感のある生活になってしまいます。これらを改善するには、東京一極集中を解消するしかありません」