【面白ストーリー】クラシック911を新車に生まれ変わらせる「Singer(シンガー)」のエリート向けポルシェ964とは?
シンガー ポルシェ(Singer Porsche): ファクトリー訪問。シンガーのエリート向けポルシェ964。ロブ ディキンソンはシンガーPSの製造で名を馳せ、レストモダーのギルド全体の模範となった。とんでもない? とんでもない!
外から見れば、ロサンゼルス空港から目と鼻の先にある目立たないホールだ。しかし、ひとたび大きな、しっかりと警備されたローラーシャッターの向こう側に行けば、驚かないわけにはいかない。「ポルシェ911」全般、特に「964」モデルシリーズに心を奪われている人ならなおさらだ。テスラやフィスカーのような未来のデザイナーのすぐ近くにありながら、ここには栄光の過去が生き続けている。
4,000時間の手作業で新車に生まれ変わる旧車たち
しかし、クラシックカーにふさわしく、大切にされ、手入れされ、磨かれ、保存されることはない。ここでは、整備されたタイムマシンの中で、クラシックカーが、場合によっては4,000時間の手作業で新車に生まれ変わる。ここでは骨組みから剥がされた12台の911が昇降台の上に立ち、その2倍の台数が隣のホールで一歩一歩車に戻されるのを待っている。
それまでは、ホールはまだクラシックカーの古典的なワークショップのようだし、ちょっと大きすぎるようにも見える。しかしよく見ると、馬具職人が革を切り、裁縫師が軽快な指で飾り縫いを巧みに施しているだけでなく、大量のカーボンパーツ、真新しいブレーキ、新しいスプリング、異常に太いワイヤーハーネス、「964」の時代にはまだ発明されていなかったスクリーンやスピーカーを発見することができる。今となっては、これが単なるレストアではなく、近代化であることは明らかだ。 「シンガー(Singer)へようこそ」と、家主のロブ ディッキンソンは言う。彼は約20年前、ここロサンゼルスでロックスターになるという固い意志を持って、ロンドンからアメリカ西海岸にやってきた。だが無念にも彼のミュージシャンとしてのキャリアは無に帰した。しかし、その代わりに彼はポルシェシーンをロックしている。ブルース スプリングスティーンやミック ジャガーのように彼を愛する者がいる。
“速くなるためなら何でも許される”
ディッキンソンは、オリジナリティに対する、まあ、かなりカジュアルな態度を隠すことはない。彼にとって、「911」が史上最高のスポーツカーであることは明らかだ。しかし、どの時代も、その時代と同じ程度のものでしかない。彼にとって、自分のクルマがオリジナルと共通するのは、シルエットやドライブレイアウト、そして速く走るという理想だけなのだ。「しかし、スポーツカーとはそういうものなのだ」とディッキンソンは言う。「速く走るためなら、何でも許される。「私たちは、このモデルの歴史全体から最良のコンポーネントを取り出し、必要な部分についてはさらに発展させてきました」。 シンガー ポルシェのインテリアは、エアコンやレーダー探知機も含めて、最新のものが主流である。 彼が「964」を選んだのは、1989年から1994年にかけてよく製造されたものの、長年あまり愛されなかったため、安く購入できたからだ。そして、彼が若いドライバーとして育った、ほとんど永遠の「911」の歴史の中の「911」だったからだ。