一時1,000円を超える日本株高騰を支える楽観期待はピークに近づいているか
米国経済のソフトランディング期待と日本銀行の金融緩和継続期待
2月13日の日経平均株価は一時1,000円以上高騰し、34年ぶりの高値を更新した。年初の株価高騰は、中国株安、新NISAの影響などにも影響され、世界の株式市場で「日本一人勝ち」の様相が強かった。 しかし足元の日本株高は、ハイテク関連を中心とする米国株高と円安の2つに強く影響される、従来型へと戻っている。円安が進行する分だけ、米国株よりも日本株の上昇幅が大きくなる傾向がみられる。 急騰を続ける日本株の先行きを左右するのは、米国株と円安の動向である。そして、現在それらを後押ししているのは、米国経済のソフトランディング期待と日本銀行の金融緩和継続期待である。そうした市場の楽観期待は相応に根拠のあることではあるが、それでも期待の程度は、現時点で概ね楽観の極にあるように思われる。向こう数カ月の間には、市場の楽観期待は一定程度修正され、株式市場に調整局面をもたらす可能性を見ておきたい。
米国株式市場は現在スウィート・スポットも景気減速、商業用不動産にリスク
米国ではインフレ率の着実な低下が進んでおり、それを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に小幅な利下げに踏み切る、との観測が強い。他方で、米国経済は個人消費、労働市場を中心に堅調さが続いている。そうした中の利下げは、インフレ率の低下に対応した予防的利下げである。 経済が堅調である中、金融緩和が実施されるというのは、株式市場にとっては極めて好環境であり、米国株式市場はスウィート・スポットに入ったと言えるだろう。 しかし、現在の政策金利(FF金利誘導目標)は5.25%~5.5%と、米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想する中立水準の2.5%を大幅に上回った状態にある。FRBは、5月あるいは6月に利上げに踏み切ると見ておきたいが、その間にもインフレ期待が低下し、実質政策金利(名目政策金利-期待インフレ率)はさらに上昇していく。FRBが政策金利を据え置く中で、金融引き締めが事実上進むことになるのである。 その影響は、企業部門を中心に、景気減速をもたらすのではないか。景気減速傾向が確認されれば、米国株が調整局面に入る一方、より本格的なFRBの金融緩和観測からドル安円高が進む。その両者ともが日本株の逆風となるだろう。 さらに米国では、商業用不動産の調整がこの先加速する可能性がある。その場合、企業の債務問題を深刻にし、景気減速の引き金となる一方、地方銀行の経営不安につながることが予想される(コラム「資産リストラに乗り出すNYCBと欧州の銀行に飛び火する商業用不動産市場の問題」、2024年2月9日)。