“二刀流”盛岡大付の松本裕樹 大谷2世になれるのか?
盛岡大付属(岩手)と東海大相模(神奈川)の好カード。甲子園のネット裏を陣取ったスカウトが熱い視線を浴びせていたのは、盛岡大付属の背番号1、エースで4番、松本裕樹だ。岩手県予選の決勝ではMAX150キロを記録、打っては大谷と同じく左打席から通算54本塁打を記録しているため、北海道日本ハムの大谷翔平に、その姿を重ね“大谷二世”と言われている。しかし、この日、投の方ではストレートのMAXは143キロで、そのほとんどが130キロ台。スカウトからすれば肩透かしにあうような変化球主体のピッチングに終始した。 ■松本投手は本来、変化球投手 それでも松本の言葉を借りれば「今日は、ストレートで押すことを考えず、変化球を低めに集めることだけを考えた」という計算づくめの150キロ封印。 東海大相模側も、「松本は本来、変化球投手。そこを意識しておこう」と門馬監督が選手に伝え、その変化球に対して的を絞って攻略に挑み、立ち上がりに2点を奪ったが、2回から8回までは、無失点に封じられた。2点を追う最終回も1点を返して、なお二死二、三塁と松本を追い詰めたが、あと1本の快音を残すことができなかった。 ■ぬかるんだマウンド 頭脳的な投球で抑える 雨のため試合開始は40分遅れ、マウンドはぬかるんでいた。本格派投手には厳しい環境の中で、力みを抑え、相手の読みの裏をかく頭脳的なピッチングで9回を123球、8安打7奪三振3失点にまとめて勝利につなげたのは、さすがドラフト上位候補の潜在能力だろう。 旧知の某スカウトに話を聞いたが、「183センチ、80キロの体格だから、本格派と思われがちだが、ああやって変化球をうまく使っていくピッチャー。今の高校野球は、そうでないと勝てないからね。ただ我々とすれば、基本のストレートのいいときと悪いときを見たいんだけどね」と言っていた。150キロが出なくとも、この1試合で、松本の評価そのものが覆ることはない。だが、かつてヤクルトの辣腕スカウトと名を馳せた片岡宏雄氏(75)は、この試合を見て、松本に厳しい評価を与えた。 ■変化球は好評価も「素材は大谷のレベルにはない」 「雨でマウンドの足元も悪かったし、ストレートが150キロも出なかったのは仕方がなかったと思う。あれだけの肉体と馬力があれば間違いなくドラフトの上位で消える選手だろう。ただ、少しフォームの上下バランスの悪さが気になった。下半身が使いきれていないので、こういうマウンドでは力をボールに伝えることに苦労したのかもしれない。ツーシーム以外のストレート系のボールがシュート回転していたのも、その影響だろう。多彩な変化球と制球力は、高校時代の大谷より上かもしれないが、素材として大谷と比べるのは少し可哀想だ。厳しい言い方だが、高校時代の大谷のレベルにはない。阪神の藤浪、大谷の高校時代は別格だったからね」。 確かにストレートのスピードとキレ、身体能力などのスケール感は、大谷の高校時代よりも、ずいぶんと劣る。