「有名ウェブサイト運営会社」に起こる異常事態の連続…「詐欺で50億円を失った」事件のゆくえ
債権は回収できるのか
インサイダー事件を生む企業環境になっていたということだろう。その情報漏洩に会社幹部が関わった疑いもあり、「インサイダー事件が特別背任事件に延びる可能性もある」(前出の検察関係者)という。 東京地検特捜部は現在、証券市場の事件としてエーバランス(東証スタンダード)のIR担当元執行役員のインサイダー事件を手掛けており、その事件にメドを付けたうえでオウケイウェイヴのインサイダー事件に着手する方針だ。 同時に注意すべきは、オウケイウェイヴの債権回収可能性についてである。同社は、23年3月、東京地裁に破産手続開始の申し立てを行い、同年5月、破産手続開始決定が発令された。破産管財人が選任され、RB社の資産・負債の調査が行われたところ、預金残高の0円だったとのこと。それは予想されていたことだが、否認権(破産管財人による取り戻し)の行使がされている投資家は81名にのぼり、破産管財人によって手続きが進められている。 RB社に対する届出債権額は約286億円でオウケイウェイヴの債権は約34億2992万円である。約12%の最大債権者で回収率が高ければそれなりの配当が期待できる。それに筆者は「債権者の債権残高及び入出金一覧」を入手したのだが、驚いたことにRB社の破たんに際し、それなりの利益を得て取引を終えた法人・個人が少なくない。
大きな利益を得た投資家に聞くと
最大の利益を享受した法人は約27億9524万円、次が約24億4643万円で、その次が14億6850万円。31の法人・個人が1億円以上の利益を得たているのだ。否認権が裁判所にどこまで認められるかだが、ポンジスキームで得た利益は吐き出さざるを得ないだろう。また最大級の利益を得た投資家(否認権を行使されているという意味では債務者)は、次のような率直な感想を述べる。 「確かに不当なスキームで得た利益と言うことで約16億円の請求を受けています。ただ、2ケタ億円以上の納税を済ませているうえ、再投資して消滅した資金もある。またRB事案の崩壊を機に実損も出ており、そのあたりは管財人に説明しています。返せと言われても返すカネがない。もちろん判決が出れば従うつもりですが…」 投資家によって事情はさまざまだが、数字上の「返済原資」はかなりあるということだ。 またリストを見て気が付いたのは、不当利得を得たとして返還請求訴訟を起こされているオウケイウェイヴ元社外取締役が被害者になっていることだった。元社外取締役が代表を務める法人がRB社に預けた資金に対しRB社が支払った金額を確認したところ、多大な損失を受けていることが判明した。 事件当初、主犯がスニール氏であるのは間違いないとして、氏の友人で金融業のイク・モハメッド氏、それにイク氏の友人の元社外取締役の2人は、「ポンジスキームに気が付いていたのではないか」という疑いを持たれていた。だから不当利得返還訴訟なのだが、管財人が作成したリストで被害者になっていれば、事件構図は変わってくる。 さらにリストには、破たん間際を伝えられるファンドとその主催者、大流通の創業一族など興味深い名が少なくない。インサイダー事件の行方に留まらず、オウケイウェイヴは今後もさまざまな話題を提供しそうだ。
伊藤 博敏(ジャーナリスト)