同学年・藤井聡太21歳から「タイトル奪取あるのでは?」伊藤匠の才能をA級棋士・中村太地が語る「“寝て起きたら強くなる”時期に2人は…」
実際に対局して感じた〈ストレート真っ向勝負〉
伊藤七段は昨年度は竜王戦と棋王戦、そして今期は叡王戦と、この1年で3度のタイトル戦挑戦を果たしています。藤井叡王と同じ21歳ということで徐々に注目が集まっているのは1人の棋士としてひしひしと感じますが――私の目から見た印象についてお話しできればと。 伊藤七段の棋風は〈ストレート真っ向勝負〉という感覚があります。 定跡の最先端を行っていて、王道と言われる戦法や戦術を駆使して勝利をものにしていくタイプです。私自身も2022年のABEMAトーナメント予選で2度、対局したことがあるのですが、フィッシャールールという早指し戦の中でも「序盤研究がすごいな」と感じながら対局しました。たとえば「Aの戦型に対してはこれ、Bでくるならばこちら」という戦い方がご自身の中で整理されているようで、こちらの意図をすぐに察してくる印象がありました。
升田幸三賞となった「持将棋定跡」に感じること
とはいえ、序盤に特化しているわけではないのも特徴です。駒がぶつかってからの中盤戦以降のタフさと正確さもありながら、攻めも受けも強いし柔軟性があります。 それは2023年度の升田幸三賞に選ばれた、持将棋定跡にも当てはまるかなと個人的には感じます。 持将棋とはお互いの玉が敵陣に入った状態で、詰みがなくなる局面のことで、両者合意の上で引き分け扱いとなります。持将棋になるケースとしては非常に長手数になることが大半なのですが、棋王戦第1局では129手で成立しました。 この1局を棋士として非常に興味深く見ていました。さらに注目したのは対局を振り返った伊藤七段の思考です。 〈全てが事前想定通りではなく、実際に現れた変化は本命ではなかった。数ある想定の中で藤井棋王が選んだ形に対して、この形は持将棋になるのでは〉という感覚だったそうです。それを踏まえて私がすごいと感じたのは、「伊藤七段はありとあらゆる変化を想定している」という点でした。 事前研究を深くした中で、実戦でそれを整理してどんな状況でも対応する。それを実現できる棋士はなかなかいません。その上で持将棋という結論になった、と考えると、AIだけを頼っているのではなく、自身の頭で1つ1つ考えているのだなと伝わってきました。 序盤研究が非常に深い上で、盤上で起きていることの認識、中終盤の強さを兼ね備えている。それが伊藤将棋の特徴と言えるのではないでしょうか。
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