官房機密費や規正法改正を巡る岸田自民の“浮世離れ”に非難轟々!──堤伸輔「この全貌を知って国民が怒らないとお思いか?」
裏金問題、官房機密費、企業献金などを巡って火だるま状態の岸田文雄首相と自民党。編集者・コメンテーターの堤伸輔の嘆きが止まらない。 【写真を見る】火だるま状態の岸田首相、泣き顔? 不満顔?
堤伸輔が岸田自民に物申す!
どこにも真実のない発言がよくできるものだ。 5月17日、政治資金規正法改正案を与党内で話し合っていた自民党は、公明党との協議が決裂し、法案を単独で国会に提出した。自公の共同提出を目指してきたわけだが、政治資金の透明化に向ける姿勢が公明と比べても自民は格段にヌルく、公明はこの件で自民と組むのは得策でないと判断したのだ。すべてが異例の展開である。 これについて記者団に問われた岸田文雄総理の答えはこうだった。 「引き続き公明党とも力を合わせ、また野党のご意見も伺いながら、政治改革特別委員会の議論に真摯に対応し、政治の信頼回復につなげていきたいと考えている」 いやあ、よく言えるなあ。 公明党と力を合わせようとしなかったから決裂したのだし、ここまで野党の意見に少しでも耳を傾けていたなら、これほど再発防止の実効性に乏しい自民案にはなっていなかったはずだ。何より、これまでもこの先も「真摯」な対応など期待できそうにないし、本気で国民の信頼を回復させようとしているとも思えない。 国民がなぜ怒っているかにまったく気づいていない岸田総理の、そして自民党の“浮世離れ”は、さいはての地に向かっている。
何が“浮世離れ”なのか。 昨年からのパーティー券キックバック裏金事件と、それに対する検察の捜査(残念ながら世論の支持を得られるレベルには至らなかった)、そしてたとえば国税当局の“不作為”(裏金作りやそれにまつわる政治資金処理へのお咎めは無し)などなどを見て、国民はあることを正しく認識した。政治家には、特に与党・自民党の政治家には、お金をめぐって、国民や一般企業などとはまったく違う“税務上・会計上の原則”が特権的に与えられていることを。 そもそもマイナンバー制度が始まった背景には、銀行預金などの“名寄せ”を容易にし、個人の資産把握をやりやすくして、国民の課税逃れを激減させようという税務当局の、すなわち財務省の思惑が潜んでいたと言われる。そして、昨年、大不評を買いながらも始まったインボイス制度にも、消費税のいわゆる「益税」と呼ばれる“お目こぼし”部分を極小化し、少しでも税収を上げようという、これまた財務省の思惑がある。 それがすべて悪いとは言わない。取るべき税金をしっかり取り、赤字まみれの財政を少しでも健全化させるのは、税務当局の大事な役割だから。しかしその結果、個人事業主や一般企業は、それこそ1円単位の会計処理・税務処理を義務づけられ、それに従っている。さらに国民には、毎年の確定申告の際にも、ふうふう言いながら領収書を整理し、申告書記入と格闘している人が多い。 ところが、だ。政治家は、いくつもの種別の政治団体を持ち、実質自分の団体なのに代表者を別人にするなど、“名寄せ”とは無縁の世界に住んでいる。団体間でお金を移動させ、使途を見えづらくする脱法まがいのテクニックを駆使する自民党幹部もいる。そして彼らは、1円単位どころか、帳簿への記入すら求められないお金、あるいは明細や領収書の要らないお金を、いろいろと使えるのだ。しかも、今回わかったように、発覚しても納税は求められない。政治資金収支報告書を訂正したある自民党議員は、新たに記載した支出の項目に「使途不明金」と堂々と書いた。これが民間企業なら、たとえば経営者が私的な飲み食いに使ったお金の明細を示せなければ(=使途不明金)、経費に計上できないので、しっかり課税される。政治家は「訂正すれば終わり」で、追徴課税も重加算税もない。 アメリカのトランプ派お得意の陰謀説に「ディープステートの存在」というものがある。いわゆる「闇の政府」がホワイトハウスを始め国政を牛耳り、そのメンバーの利益を国家・国民の利益より優先させているといったたぐいの“おとぎ話”だ。むろん、誰もそれを証明もしくは摘発した者はなく、悪いことはすべて政敵のせいにするための作り話に過ぎない。