アングル:中国、ロ朝の関係緊密化に距離 対西側関係の不安定化望まず
Laurie Chen Josh Smith [北京/ソウル 19日 ロイター] - 中国は今週、ロシアのプーチン大統領による北朝鮮訪問に対して用心深い反応を示した。3国間で何らかの合意を結べば他の国々との関係が複雑化しかねないため、距離を置いている形だ。 19日に平壌で行われたプーチン氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との会談を、中国は傍観した。 中国外務省の林剣報道官は18日の記者説明で、首脳会談はロシアと北朝鮮の2国間交流である、と述べるにとどめた。 米カーネギー国際平和財団のトン・ザオ氏は「中国は、北朝鮮がロシアと軍事協力を深めることに一定の距離を置いている。中国はまた、自国とロシア、北朝鮮が事実上の同盟関係にあるとの認識を持たれないよう注意している。主要西側諸国と現実的な協力を維持する上で妨げとなるからだ」と解説した。 北朝鮮が昨年、新型コロナウイルスのパンデミックに対応する国境管理を緩和して以来、中国との貿易は回復した。しかし金正恩氏の政治的関与はロシアに集中している。 金氏は昨年、パンデミック後初めてロシアを訪問し、プーチン氏と会談した。そしてプーチン氏は、北朝鮮の国境再開以来、政治的にも経済的にも孤立した同国を訪問した最初の首脳だ。 米国や同盟国の当局者、国連の制裁監視団によれば、ロシアはまた、国連安全保障理事会の決議で禁止されている北朝鮮製の弾道ミサイルを使ってウクライナの標的を攻撃するという、前例のない行動に出た。 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の数日前、中国はロシアとの「限りない」友好関係を宣言。しかし中国はこれまでのところ、戦争のための武器や弾薬の提供を避けている。 中国はロシアとともに国連安保理で北朝鮮への新たな制裁を阻止してきたが、制裁の実施状況を監視するパネルの延長にロシアが拒否権を発動した際には棄権した。 ある韓国政府高官は、国連決議に違反して中国に残っている数千人の北朝鮮労働者を巡り、中国と北朝鮮の間に緊張があるようだと述べた。 <中国は経済重視> 中国は北朝鮮にとって最大の貿易相手国であり、両国は1960年代に相互防衛条約を締結している。両国は他のいかなる国ともそうした条約を結んでいない。 米シンクタンク、スティムソン・センターの中国プログラム・ディレクターであるユン・スン氏は、この関係が変わることはないだろうが、金正恩氏とプーチン氏の関わりや、2人の予測不可能な行動は、中国に新たな不確実性をもたらしていると説明。「中国の立場を揺るがすような明確な進展や政策が出てくるまでは、中国は静観するつもりだろう」と語った。 またスン氏の見方では、ロシアと北朝鮮の関係緊密化は中国にとって、米国の注意をそらすことになるため悪い話ではない。「中国としてはただ、3国間の取り決めであるかのような仕草を注意深く避けさえすれば良い」という。 中国は外交政策や貿易問題で米国と衝突することが増えているものの、ロシアや北朝鮮のような世界の「のけ者国家」とは程遠い。米国とその同盟国である日本と韓国は昨年、中国の貿易相手国トップに名を連ねた。 中国の李強首相が5月の日中韓サミットで北朝鮮の核兵器について話し合った後、北朝鮮は珍しく中国を公然と非難した。 プーチン氏の北朝鮮訪問は、中国の外務・国防高官らによるソウル訪問と日程が重なった。 韓国の説明によると、同国側はプーチン氏の北朝鮮訪問に懸念を示し、中国側は「ロシアと北朝鮮の交流が地域の平和と安定に寄与すること」への期待を表明した。 スウェーデンの安全保障開発政策研究所のニクラス・スワンストローム所長は、北朝鮮とロシアの連携が、中国にとって地域情勢をより困難にする挑発的行動につながる場合、中国は間違いなく懸念を抱くだろうと述べ、「中国が望むのは貿易と、経済の再建だ」と付け加えた。