<解説>「少年ジャンプ+」創刊から10年 「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」の人気マンガアプリが変えたアニメとの関係
また上記のように、これまでアニメは見ても“マンガにまでは手を出さなかった人たち”が気軽に原作マンガにまで触れられるようになったことは、作品の布教や拡散にも一役買っていそうです。
従来、紙のマンガを直接貸し借りできる間柄でないと、都度購入や課金が必要なマンガは、見放題配信があれば気軽にすすめられるアニメと比べると、周りにオススメするハードルは高めでした。しかしジャンプラの初回全話無料の機能は、そうした作品の布教ハードルを下げるだけでなく、SNSを介して、身近な人たちにとどまらない不特定多数にまで作品をオススメすることも可能にしています。
また、そうしてSNSで広く拡散され話題になった作品は、アニメ化が決まる前から知名度も高いため、満を持してアニメ化が決定した際に、注目度や盛り上がりもより一層大きくなることが多いです。今年話題の「怪獣8号」や「ダンダダン」も、アニメ化発表以前から度々話題になっていたため、アニメ化の決定や放送開始に伴う注目度や反響も、その分大きいものとなっていました。
こうした初回全話無料がもたらす変化には、コミックス派だった人が「アプリで読めるならいっか」とコミックスを購入しなくなったり、アニメから入った人が「原作で読んだしいっか」と、アニメ続編を追わなくなったりといったものもあるかと思います。しかし昨今、マンガだけでなくアニメやソシャゲ等、サブスクや無料の作品が無尽蔵にあふれる中では、そもそも作品が人々に知られない、刺さるはずの人に届かないということの方が、上記の懸念点以上に作品の盛り上がりにとって致命的なのかもしれません。ジャンプラの初回全話無料の機能はそうした中で、“まず作品に触れてもらう”ことになにより特化した、昨今の楽しまれ方にもぴったりな機能となっているのでしょう。
数年前の「タコピーの原罪」や、最近ではネットマンガ発の「ふつうの軽音部」など、上記ジャンプラの“気軽に触れやすい”特性とも相性の良い、思わず他の人に広めたくなるような、SNSで盛り上がりを生むオリジナル作品も増えてきています。こうした中で、今後はどんな作品が生まれアニメ化され、話題になっていくのか、10周年を迎えた今後も、ジャンプラの連載タイトルには引き続き、マンガファンからもアニメファンからも、熱視線が集まっていきそうです。