2年がかりの米大統領選が実質スタート なぜこんなに長い選挙を行うのか?
第2段階の本選挙は11月の「第1月曜日の翌日」に決められています。こちらは各州の選挙人を獲得する競争で、全538の過半数の270の選挙人をとった候補が勝利です。1票でも他候補を上回った候補者がその州の選挙人を総取りする仕組みになっている州が大多数なので、両党の候補者陣営は州ごとの戦略を立てて、戦っていきます。人口が最も多いカリフォルニア州はそもそも民主党の候補に投票することがほとんどなので、結果は最初から分かっているようなものですが、民主・共和の支持が拮抗している州で人口が多いフロリダ州やオハイオ州は接戦州として常に注目されています。 選ばれた選挙人はどの候補者に投票するか事前にみんなに公言しています。本選挙では有権者は選挙人ではなく、候補者に投票するため、有権者が大統領を直接選んでいるのと同じです。しかし、形式上、間接選挙となっており、選挙人は「12月の第2水曜日の次の月曜日」に再度投票して大統領を選んでいます。間接選挙にしたのは、民主主義の気まぐれな性質を抑えようという憲法の起草者たちの工夫です。ただ、この制度が形骸化しているのは事実で、選挙人の投票結果にはほとんど注目が集まりません。
「前倒し」進み「影の予備選」が長期化
予備選段階のうち、前述の通り、アイオワ州党員集会、ニューハンプシャー予備選が真っ先に開催されることが、民主・共和両党の規則で決まっています。ただ、1970年代までのアイオワ州党員集会、ニューハンプシャー予備選は、立候補者がどんな人物か簡単に見極める場に過ぎませんでした。そして、両州での戦いの後、ほとんどの立候補者はかなり長い間、脱落せず、選挙戦を続けました。 スーパーチューズデーも当初はなかったほか、候補者決定の決め手となるのはカリフォルニア、ニューヨークなどの人口が多く、党大会への代議員が多い州の予備選であり、これらの州の代議員選出は予備選の比較的最終段階に行われていました。また、当時は夏の全国党大会で、「逆転」の可能性もあったため、全国党大会の役割も大きかったのです。 しかし、過去40年間でこの状況は大きく変化しています。この変化とは、予備選段階の最初に予備選・党員集会が集中し、大統領選挙の実質の候補者の決定時期が毎回の選挙ごとに早くなっている「フロント・ローディング現象」に他なりません。 フロント・ローディングとは、「前倒し」の意味であり、大統領選挙の予備選段階が予備選期間の前半部分に集中し、事実上の党候補者の決定もきわめて早くなるという現象です。フロント・ローディング現象の結果、本来なら全ての州の予備選・党員集会が終わった後の夏の全国党大会で正式決定するはずの共和・民主両党の大統領候補は3月や4月の段階に実質的に決まるようになっています。全国党大会は戦いの場ではなく、セレモニーの場に変わってしまいました。 ただ、注意したいのは、候補者にとって実際はフロント・ローディング現象のために、「短距離走」になったのではなく、フライングで実質的な選挙運動がどんどん前倒しになってしまったという事実です。冒頭のアイオワ州の動向のように、予備選段階が始まる1年以上前から、選挙運動がスタートとするのが一般的になっています。実際の予備選ではないので、「影の予備選」と呼びますが、この期間が非常に長くなっています。