<春はばたく>第93回センバツ注目校紹介/4 上田西(長野) 全員、先陣切る覚悟で
長野県上田市の上田西グラウンドには、新チーム結成後、2年生全員に与えられるようになった役職ごとの目標が書かれたボードが置かれている。主将や副主将などに加え、新たにグラウンド整備や寮生活などグラウンド内外の役職が設けられ、それぞれが「石拾いをする」「あいさつの徹底」といった目標を掲げる。 2019年12月に監督に就任し、チームを初のセンバツ出場に導いた吉崎琢朗監督(38)は「自立や自覚を促したかった」と意図を説明する。吉崎監督は佐久長聖(長野)、大東大、社会人野球の一光を経て、原公彦前監督の誘いで13年に上田西のコーチに就いた。夏は同年に甲子園初出場を果たし、15年には甲子園初勝利を挙げたが、春の甲子園につながる秋季北信越大会では、他県チームの高い壁があった。 強豪に立ち向かうために選手たちに求めたのが、人任せでなく全員が「勝利にコミットする」意識だった。全員に役職を与えたのもその一環。さらに大一番だった昨秋の北信越大会準決勝の星稜(石川)戦前日には、「ファーストペンギン」のエピソードを紹介した。ペンギンは群れで行動するが、リーダーはいない。天敵がいる海に魚を求めて最初に飛びこむ一羽の後に皆が従う。一人一人に「勇敢なペンギン」になる覚悟を求めた。 試合では打線が上位から下位まで切れ目のない攻撃を見せ、相手の10安打を上回る11安打を放ち、逆転勝利で決勝進出を決めた。主将の柳沢樹(2年)は「以前はキャプテンが引っ張っていく感じだったが、今は全員が自分事として考えてくれている」とチームの変化を口にする。 帽子のロゴを伝統ある「上田西」から「UN」に変えて臨む初めての甲子園。吉崎監督は「星稜に勝てたことが勢いだけじゃなかったと証明したい」と力を込める。出場校中トップのチーム打率4割8厘を誇る強打線を看板に掲げ、新たな歴史を刻むつもりだ。【高橋秀明】=つづく