「どちらかが死ななければ終わらなかった」58歳母をバラバラ死体にした娘を追い詰めた「呪縛と執着」
戻りたくない場所
あかりが母を殺そうと思ったのは、9年におよぶ医学部浪人を強制されたからではなかった。その「地獄の時間」を脱し、ようやく自分の足で歩こうとしたとき、またも母の暴言や拘束によって「地獄の再来」となることを心(しん)から恐れたのだ。 20代のときには耐えられた、受け流すことができた「地獄」も、9年の浪人を経て大学という外の世界を見、30歳を超えたいまとなっては、二度と戻りたくない場所だ。 あかりはこの陳述書を、 いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している。 という言葉で締めくくっている。あかり自身には、犯行への迷いはなかった。あえて言えば、後悔もなかった。私か、母のどちらかが死ぬ。それ以外に選択肢はなかったのだ。 母の存在は、娘を強く呪縛していた。 連載第1回から読む【滋賀県河川敷で58歳母がバラバラ死体に…逮捕された30代娘が明かした「医学部9浪」の衝撃と母との確執】
齊藤 彩