表参道も境内も「どこか別の国のよう」 「写経」「座禅」体験の外国人、善光寺周辺に急増 間に合わない通訳対応
変わる善光寺かいわい
雨がやみ、雲間から朝日が降り注いだ4月25日午前6時ごろ、長野市の善光寺本堂前。一列に並んだ参拝者が腰をかがめ、両手を合わせて目をつぶる。毎朝の法要「お朝事(あさじ)」の行き帰りに大勧進貫主や大本願上人らが参拝者の頭に静かに数珠を当てる「お数珠頂戴(ちょうだい)」。早朝にもかかわらず参拝客に外国人観光客が交じる光景は珍しくなくなった。 【写真】GW初日の善光寺
本堂から出てきた心理学者のオランダ人女性(55)は23日に来日し、初めて善光寺を詣でた。日頃親しむカトリックと異なる静かで厳かな法要を体験してみたかったという。新型コロナが落ち着き、記録的な円安が来日の決め手で「すばらしい時間を過ごせた」。エンジニアの夫(57)と境内を後にし、次の目的地の名古屋に向かった。
「どこか別の国を日本人が歩いているようだ」。善光寺表参道沿いで「中央館清水屋旅館」を営む清水翔太郎さん(80)は実感を込める。年明け以降、宿泊客の約8割を外国人が占める。従来は欧米からが中心だった宿泊客は台湾や中国などのアジア圏が増え、特に夫婦や家族などの個人客が目立つ。「勢いがこれまでとは圧倒的に違う」
表参道沿いや仲見世通りの土産店などでは、夕方以降に散策する外国人観光客を迎え入れようと閉店時間を通常より遅らせる店も出ている。
市内の観光振興に取り組む公益財団法人「ながの観光コンベンションビューロー」は外国人スキー客を狙い昨年、アルピコ交通(松本市)と協力して白馬―長野駅の特急バスの一部を白馬―善光寺大門に延伸。昨年12月~今年3月、外国人を中心に延べ4700人ほどが利用した。
石黒宏之専務理事は、SNS(交流サイト)による情報の広がりでスキー客が善光寺まで足を運ぶ新たな流れができている、と推測。同法人は1月、来日したタイやシンガポールの旅行代理店の関係者を善光寺に案内。アジアからの訪日客のさらなる増加も見込まれる中、「祈りの寺で、本物の体験をどう届けられるかが鍵」と話す。