いまEV専用タイヤが増加中! クルマとしての用途は変わらないのに普通のタイヤと何が違うのか?
急増中のEV用タイヤとは
クルマのなかでももっとも重要な部品といわれているタイヤ。車体の中で路面と唯一接している部品であり、タイヤから路面に進んだり、止まったり、曲がったりとクルマのあらゆる力を伝えている。近年EVが増えてきてEV向けタイヤなるものも登場してきているが、通常のタイヤとの違いはあるのだろうか? EV向けだからこそのポイントを紹介する。 【写真】メリットだらけ!? トラックの世界にアルミホイールが広がっていた 重さへの対策 通常のタイヤとEV向けのタイヤの違いは、結論からいえばある。それはEVの重さが関係してきている。EV、とくにバッテリーのみで駆動するBEVはバッテリーが重たいため、同じボディサイズのエンジン車(ICE)やハイブリッド車と比べると車重がどうしても重たくなってしまう。この重たい車重に対しての対策が必要となるのだ。 具体的な対策でいえばタイヤ剛性と耐摩耗性を高めて対応している。車重が重たいため剛性が高くないと、ハンドリング性能やコーナリング時のフィーリングがよくなく、安定感に欠ける印象となる。また、重たいクルマのほうがタイヤは減りやすい、耐摩耗も高めておかないとエンジン車とは同じ感覚でいたらあっという間にタイヤが減ってしまう。 商品価値を考えると転がり抵抗と静粛性も重要 また電気自動車向けという商品付加価値を考えると、燃費性能(電気自動車の場合は電費性能だが)に響く転がり抵抗を抑えて、静粛性を高めることも重要になってくる。静かで環境に優しいというのはEVの売りポイントである。「EV向けタイヤ」そんな商品コンセプトが大前提にある以上、転がり抵抗と静粛性を犠牲にしたタイヤを作ることはできない。 もちろん、これまで紹介した性能を高めつつもウエット性能といった安全性能をおろそかには出来ない。EV向けのタイヤはあらゆる性能を引き上げたワガママなタイヤなのだ。 ハイパフォーマンスEV向けタイヤはもっとワガママ! そして最近はハイパフォーマンスな電気自動車も登場してきている。そのような電気自動車向けのタイヤとなると、エコなイメージにプラスしてスポーツ性能も必要となっている。高いグリップ性能やハンドリング性能などだ。 たとえば、ミシュランタイヤのスポーツタイヤといえばパイロットスポーツシリーズだが、そのラインアップの中にスポーツEV向けの「PILOT SPORT EV」というタイヤがある。このタイヤは転がり抵抗を抑えて静粛性を高めるという一般的なEV向けタイヤと同じ配慮をしつつも、スポーツ性能を高めている。その実現にはコンパウンドの変更に留まらず、ケーシング全体の最適化や構造部材の選択など、あらゆる要素を含めてタイヤ全体をパッケージングさせる高い技術力が必要なのだ。 いい換えてみればEV向けタイヤは総合性能が高いといえるだろう。だからといってEV向けタイヤをエンジン車に装着するのは間違えといえる。確かに問題なく走るだろうが、想定している車重がマッチしないため乗り心地やバネ下重量など、総合的に見たらベストな選択とはいえないだろう。商品コンセプトや各種性能バランスをチェックして自身のクルマとカーライフに合ったタイヤを選ぼう。
西川昇吾