オダギリジョー、消極的なテレビドラマに企画段階から参加した理由 冨永昌敬と語り合う
■「テレビドラマの主役というものに対して、少し消極的なところがあるんです」
――オダギリさんは、『時効警察』シリーズ(2006年~/テレビ朝日系)をはじめ、『リバースエッジ 大川端探偵社』(2014年/テレビ東京系)や『おかしの家』(2015年/TBS系)など、深夜ドラマの主演作の系譜みたいなものがあるように思っていて。しかも、その監督が三木聡さん、大根仁さん、石井裕也さんと、全員映画を撮られる監督です。本作も、その流れにあるような作品なのかなと思ったのですが……。 オダギリ:そもそも、自分は映画に重きを置いてきたので、テレビドラマの主役というものに対して、少し消極的なところがあるんですよね。なので、テレビドラマをやるとしても映画的な価値観で作れる人と組みたいし、オリジナルで脚本を書ける監督とやりたい気持ちが強くて。そういう意味では同じ流れにあると言えると思います。今回もやはり、冨永さんやこの制作チームとだったら、面白い挑戦ができるだろうと思ったし、世に問うべく、一歩を踏み出した作品になっているんじゃないかなと思っています。 ――最近では、オダギリさん自身が脚本・演出を務めた『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(2021年・2022年/NHK総合/以下『オリバーな犬』)がありましたが、それと比べると本作は、あまりトリッキーな要素がないというか、変な言い方ですけど、普通に観ることのできるドラマになっていますよね? オダギリ:それは、さっき冨永さんがおっしゃっていたように、オークワが「普通の人」であるというところが、やっぱり大きいんじゃないかと思います。というか、冨永さんの作品の面白さって、一般的に言われているような奇天烈なところではないですからね。いやそんなこと言うと、僕自身も、『オリバーな犬』で奇天烈なことをしているつもりは、全然ないんですけど(笑)。 ――そうなんですね(笑)。 オダギリ:ただ、『オリバーな犬』のような作品が持つ面白さと、冨永さんの作品が持つ面白さって、ちょっと路線が違うものだとは思っています。だから、そうやって「普通に観ることができる」と言ってもらえることは、この作品にとってすごく良かったと思うんです。逆に「『時効警察』っぽかったですね」と言われたら、失敗ですよね。 ――そう言ってしまう気持ちもわからないではないですけど……やっぱり、ちょっと違うんですよね。実はもっと、リアリズム寄りであるというか、人間ドラマの部分があるわけで。 オダギリ:いや、それぞれがまったく違いますからね。それはやっぱり、作品のオリジナリティだし、それぞれの作家性であって。それはすごく喜ばしいことだと思っています。 ――映画『パビリオン山椒魚』(2006年)で初めてタッグを組んで、片やドラマ『オリバーな犬』のオダギリさん、片や映画『白鍵と黒鍵の間に』の冨永監督なので、一体どんなトリッキーな作品になるのかと、ちょっとドキドキしていたところがあったのですが……。 冨永:まあ、そうですね(笑)。ただ、さっき話したように、同じ内容で90分の映画を作ろうとしたら、多分その方法論みたいなものが、もっと前面に出てしまうと思うんです。短い時間の中で、どうやってこの物語を語り尽くそうか、どうやってこのオークワという人物を面白く見せるかと考えると、いろいろな部分を省略しなければならなかったりするから。もちろん、それは映画の面白いところではあると思うんですけど、今回の作品は、連続ドラマというたっぷり時間がある中で、できることをやっていったつもりではあるんですよね。先ほど言ったように、僕も初めてのチャレンジではあったので、明らかに普段と違うことしているなという感覚もあったので。ただ、出来上がったものは、すごく気に入っているんですよね。それはやっぱり、オダギリさんと一緒にやったということが相当影響していると思っています。だから、オダギリさんと一緒にやれたこと、プラス個人的にはこういう新しい挑戦ができたという、二重の意味で思い入れがある作品になりました。 オダギリ:僕もこの作品は、かなり好きですね(笑)。この1話30分にも満たない尺が良いんですよね。毎回もっと観たいところで終わって行くんですが、それって結構大事なポイントな気がしていて。1時間のドラマを観て満足するときもあるけれど、あっという間に終わることも、作品の面白さを引き立てるなと思います。 ――なんとなくわかります。もうちょっと続きが観たいと思わせるような感じって、ある意味連続ドラマの醍醐味のひとつですよね。 オダギリ:そうなんです。今回の作品では、特にそれを感じていて。僕は毎晩、寝る前の30分に、この作品を観ていたんですけど、そうやって毎日1話ずつ観ることが心地良くて。ホントはもう1話観たいんだけど、それはちょっと明日に取っておこうみたいな。 冨永:(笑)。 オダギリ:なので、みなさんも、そういう感覚で楽しんでいただけたら。というか、そういう観方をお勧めしたいなと思っています(笑)。
麦倉正樹