農家に感謝され、購入者も喜ぶジビエに挑む35歳 「両親の畑」守るためユーチューブ参考に狩猟、解体、販売を独学
農地を荒らすイノシシやシカを生け捕りにして食肉処理し、ジビエの魅力を世の中に届けている人がいる。大分県日田市大山町の諌山亮輔さん(35)。狩猟から解体まで動画投稿サイトのユーチューブを参考に独学。さらに販売まで基本的に1人でこなすスタイルで3年目に入った。「農家に感謝され、購入者にもおいしいと喜んでもらえる。大変だが、やりがいがある」。近い将来には従業員1人を雇用して事業拡大を目指す。 【写真】シカの解体も1人で手際よくこなす諌山さん 生まれも育ちも大山町。実家で農業に従事する両親から「畑がイノシシに荒らされるようになった」と聞かされたのが、この仕事に挑むきっかけとなった。「着物のクリーニング」の開業を目指し京都で修行していた20代後半のころだ。 30歳で実家に戻り、実家を拠点に着物クリーニングを開始。一方で両親の畑を守りたいと、わなによる狩猟免許も取得した。 「初めて獲物がかかった時のことはよく覚えている。体重50キロほどのイノシシ。暴れて私の方に向かってこようとするので恐怖でした」。わなを町内のあちこちに仕掛けて、最初の1年間でイノシシとシカを合わせて約百頭を捕獲した。 ★ ★ 当初、獲物は一部を自家用の食肉にしたり、友人にお裾分けしたりしていたが大半は廃棄せざるを得なかった。「捨てるのはもったいない」。そこで実家近くの農業用倉庫を自身が中心となって改装し、食肉解体施設兼直売所「天領じびえ」を2022年1月に完成させた。費用はクラウドファンディングで集めるなどした。 精肉販売は同年4月にスタート。心がけるのは品質の高さ。わなにかかった獲物はその場で殺処分せず、生きたまま車で解体施設まで運ぶ。鮮度が落ちないようにと、殺処分から食肉処理までの時間を最短にするためだ。 部位ごとに異なる味わいを楽しんでもらえるよう、焼き肉用や鍋用にとえり分ける作業もしっかりやる。体重50キロのイノシシの皮をはぐのに1時間。解体してブロック肉にするまで2時間半。「集中するのですごく疲れます」 ★ ★ 地元や福岡市などでの各種イベントに出店し、肉を焼いて販売することもある。「ジビエはなじみがまだあまりなくPRも兼ねている。シカ串1本300円なら買ってくれ、おいしさを感じてもらえますから」 23年、ジビエ事業は着物クリーニングと同程度の稼ぎになった。「この2事業が家族4人(本人と妻、子2人)の生計を賄う軸です」と話す。 県西部保健所によると日田市でイノシシ、シカを食肉処理し、販売するのは諌山さんを含めて3業者のみという。 (西山忠宏) ☆ ☆ 天領じびえ 日田市大山町東大山1872-2。連絡先は090(1632)0383。イノシシやシカの精肉などの商品は公式サイトで購入できる。