対露制裁の抜け穴だった中国の銀行がロシア企業との取引を停止、ロシア産原油をバナナで決済したインドの製油業者も
■ 相手国の取引停止に打てるロシアの手 再整理すると、今後のロシアの貿易は、相手方において米国による二次制裁を回避する動きが強まったことを受けて、輸出入の両面で停滞することになるだろう。とりわけ輸入の停滞は、ロシアのモノ不足に拍車をかけ、インフレ圧力を高めると予想される。また輸出の停滞は、資源企業からの税収の減少を通じて財政を圧迫する。 当然、ロシアはこうした事態を軽減させるために、対抗手段を打つことになる。中国やインドも、可能な限りは協力するだろうが、現物決済の拡大は非現実的な対抗策である。それよりも、ズベルバンクなどVTBバンク以外のロシアの大銀行が中国やインドに進出して、現地の銀行や企業と決済することのほうが現実的だ。 それでも、ロシアの銀行が進出先で金融サービスを提供できるまでには、相応の時間を要する。それに、二次制裁のリスクを冒したくない現地の銀行は、ロシアとの取引を手控えるだろう。それ以外の抜け穴を作り出すとしても、取引には限界がある。こう考えていくと、ロシアと新興国との貿易が回復していく展望は描きにくい。 ※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。 【土田陽介(つちだ・ようすけ)】 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)がある。
土田 陽介