西島秀俊が当事者に寄り添う裁判官を好演!法曹関係者にも好評だったドラマ「ジャッジ 島の裁判官 奮闘記」
その演技力でどんな役柄でも印象深く演じ、観る者を作品の世界に引き込む俳優・西島秀俊。「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」で演じた天才救命医、「きのう何食べた?」の料理好きで同性愛者の弁護士など、主役、脇役にかかわらず、幅広い役柄をこなして視聴者の心を掴んできた。 【写真を見る】裁判官を演じる西島秀俊 そんな西島の出演作の中にあって見逃せないのが、裁判官を演じた2007年放送のドラマ「ジャッジ 島の裁判官 奮闘記」だ。西島の好演だけでなく、裁判の様子がリアルに再現され、法曹関係者の評価も高かった。 本作で西島が演じるのは、裁判官・三沢恭介。大阪地裁で知的財産部のリーダーとして活躍していたが、ある時、鹿児島県・大美島に転勤となる。島の裁判官は恭介1人で、刑事、民事などすべての裁判を担当する。大変な仕事だが、家族や島の人々とふれ合い、また、1つ1つの案件に真摯に向き合いながら、恭介が裁判官として、父として成長していく姿が描かれる。 物語は、恭介が妻・麗子(戸田菜穂)、娘の麻衣子(桝岡明)と共に、大美島に向かうシーンから始まる。家族と一緒にいる恭介には穏やかな空気があり、新居の庭ではしゃぐ麗子たちを見つめる恭介の笑顔には、仕事と家庭が新たな一歩を踏み出したことへの充足感も感じ取れる。 しかし、大美島に転勤する前の恭介は、多忙のあまり家族といる時間を作れず、離婚寸前だった。第1話の中盤に過去の回想シーンが挿入されるが、疲れ切り、虚ろな表情で電車に乗っている恭介はまるで別人のようだ。 そして転勤が決まった後、母・早苗(大山のぶ代)に、麗子と麻衣子も連れて行くようにと諭された時に、何かに気づいたような、糸口を見つけたような表情を見せる。麗子に転勤の話をする時には、泣きそうになりながらも自分の気持ちを伝え、麻衣子が「島、行きたい」と言った時には、その想いに胸を打たれたような眼差しになる。そういったシーンからは、恭介の家族への想いが強く伝わってくる。西島がその想いを十二分に体現しているからこそ、新天地で新たな一歩を踏み出した恭介の真摯な姿勢、熱意が説得力を帯びるのだろう。 裁判官としての仕事も始まり、法服を着て、被告人を厳しい目つきで見つめる恭介には威厳がある。しかし、そこはおおらかな大美島。黒糖焼酎を飲んでから法廷に立つ弁護人に調子を狂わされるといったコミカルなシーンもありつつ、恭介はさまざまな事件に臨む。 第1話の離婚調停では、迅速に解決しようとする恭介が、担当の家裁調査官・谷川(的場浩司)の意見を聞かず、夫婦を同席させて調停しようとする。しかし、谷川が言った通り夫婦の掴み合いに発展し、谷川が怪我をしてしまう。事件が意外な方向へ発展する中で、恭介も考え、調べ、最適解を見つけ出そうともがく。そういった姿には、恭介が依頼人に寄り添おうとする姿勢が感じられる。 第4話で、恭介のかつての同僚が、「俺たちの判断で、裁判の当事者の次の人生が始まるんだ」と語るシーンがある。当事者の未来を考えて最善の判断をするのが裁判官の役割であり、恭介がその重みを背負いながら事件と向き合う姿は心に染みる。それがこのドラマの魅力であり、それを余す所なく伝える西島の演技はまさに秀逸だ。第3話で、介護疲れの果てに夫を殺した女性に「私はまだ、判決を出せる自信がありません。それは、あなたの言葉をまだ十分に聞いていないからです」と言うシーンは、恭介が当事者に寄り添っているがゆえだろう。 本作には交通事故やリゾート開発差し止めの訴訟など、さまざまな事件が登場する。恭介はそれらにどんな判断を下すのか。随所に挿入されるロケ地・奄美大島などの景色を楽しみながら、西島演じる島の裁判官・三沢恭介が奮闘する姿を最後まで見届けてほしい。 文=堀慎二郎
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