「エッシャー 不思議のヒミツ」が、豊田市美術館で7月に開催。初期から晩年まで、奇想の天才の世界を体感
初期の学生時代に制作した作品や、晩年に至るまでの約160点の作品を紹介。作品の世界観を疑似体験することができる体験コーナーも
「エッシャー 不思議のヒミツ」が、豊田市美術館で7月13日~9月23日に開催される。 マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898~1972)は、オランダのデルフトの工科学校で学んだ後、ハールレムの建築・装飾学校へ移り、その後版画を学んだ。始めは、卒業後に旅行したイタリア風景を題材にした精緻な描写による版画を作っていた。 その後、旅先で出会ったスペインのアルハンブラ宮殿のアラベスクの装飾に注目。動物や爬虫類、昆虫などを様式化させた形態が画面を埋め尽くす、抽象的で幾何学的な作品を作り始める。それらを深化させ、図と地の関係や、平面による描写と見かけの立体性との関係における錯視効果をねらった作品を生み出した。概念と視覚のずれをとおして不条理な空間の知覚を喚起する作品は、神秘的、幻想的な雰囲気を持ち、世代を超えて広がるとともに、数学の専門家からも注目されている。 本展では「だまし絵」的な代表作はもちろんのこと、初期の学生時代に制作した作品や、晩年に至るまでの約160点の作品をとおしてエッシャーの画業を紹介。中でも、故郷のオランダを離れイタリアに滞在した時代の作品や、20~30代という修行時代に制作した作品には、幾何学的な形態や強調された遠近法、建築の複雑な構造に対する関心など、後の作品のルーツを見出すことができる。 反復や循環、螺旋構造、反射する面、幾何学的立体など、多くの事象を探究し、その成果を作品へと昇華させたエッシャーの世界を知るために、展示はテーマごとに6つの章で構成。エッシャーが何に関心を抱き、何を目指そうとしたのか、その特徴を明らかにする。 また、作品の世界観を疑似体験することができる体験コーナーも。どのような原理で人は錯覚に陥るのか。エッシャーが作品に取り入れたトリックについて、体験しながらその仕組みを学ぶことができる。作品を見て、体感して、エッシャーの世界をより楽しむことができる展示になりそうだ。
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