「正月を迎えられない…」味や香りで人気の「江戸前ノリ」が大ピンチ! 温暖化で生産量が大幅減、クロダイの食害増え漁期も短く
江戸時代に東京湾で養殖が始まり、「色良し、味良し、香り良し」と人気も高い「江戸前ノリ」の不作が続いている。地球温暖化による海水温上昇の影響で、活動範囲を北に広げたクロダイによる食害が増加。海の環境が変わり、漁期も短くなっている。生産量回復は難しく、江戸前にこだわってきた老舗のり店は営業を断念した。ノリの生産量減少は全国的な傾向でもあり、関係者は気をもんでいる。(共同通信=板井和也) ▽生産量5分の1以下に、天敵クロダイは駆除しても値段がつかず 千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所によると、江戸前ノリは千葉県産が大半を占める。市川、船橋、富津地域などで養殖され、冬の冷たい海で成長する。 千葉県では2002年度に約5億1千万枚生産されていたが、21年度には約1億1千万枚まで減少。19、20年度は1億枚を割った。生産量は全国でも減少傾向だ。全国漁連のり事業推進協議会によると、21年度は約63億7千万枚と、20年前と比べ4割以上減った。
東京湾漁業研究所の島田裕至・主任上席研究員によると、東京湾では15年度からクロダイの食害が大きく影響するようになったという。クロダイはもともと冬は比較的水温の高い東京湾の南でほぼ動かず、あまり餌も食べずに過ごしていた。だが海水温上昇により、北のノリ養殖場のある海域まで活動範囲を広げ、ノリを食べるようになった。クロダイは雑食性で、個体数も増えているとみられる。クロダイによる食害は東京湾のみならず、全国のノリ産地に共通する問題だという。 それでは、増えたクロダイを駆除がてら捕獲して大々的に食用に回せば、とも思うが「地域によってはよく食べるところがあるらしいが、特に最近は水揚げしても値段がつかないらしい。価値が下がっているのでは」(東京湾漁業研究所の岩崎晶知所長)という。そもそもクロダイは警戒心が強いためか、なかなか網にもかからず、捕獲が難しいそうだ。 ▽下水道処理の高度化も影響 東京湾内のある地点では、1950年代に8度ほどだった1月の海水温が2010年代には11度程度まで上昇。島田氏は「近年は黒潮大蛇行の影響で温かい水が東京湾に入り込み、海水温が下がりにくくなっているかもしれない」と推測する。