書籍化オファー続々 飼い主が描くリアルなSNS発猫マンガ『俺、つしま』
「あるある」から意外な行動まで、猫のリアル
野良出身の猫、つしま。大柄で、出会った当初は確かに見た目も綺麗とは言い難い猫だったという。しかし、付き合ううちにその性格の良さ、かわいらしさ、おもしろいところをどんどん発見していったという。 「私たちが出会ったつーちゃんのいいところをみんなにももっともっと知ってもらいたいと思うようになったんです」 『俺、つしま』が読者に受けているのは、絵のうまさもさることながら、猫飼いが共感できる「あるある」が散りばめられている点がまずあげられる。 例えば、猫が寂しそうにしていると思ったら虫を見ていただけとか、布団の中で猫に気遣って足を動かせないとかいった話は共感する人が多い。その一方で、掃除機に吸われるのが好きな猫がいることを描いた回では、「猫は掃除機が嫌い」という思い込みが多い中、リプライでも「うちの子も掃除機好き!」など、作者が思っていた以上の反応があった。 猫飼いもびっくりの意外な行動も描かれている。猫が松ぼっくりを拾ってお土産に持ってくるというエピソードだ。冗談かと思いきや、実話だというから実に興味深い。
青白い顔をしたつしまの飼い主である「おじいちゃん」が実は女性(ストーリー担当の妹)というのがシュールで、おじいちゃんの隠れファンも結構多いようだ。作画者である兄が、「猫はかわいいけど、飼い主はかわいくないから描く気がしない」という理由からどんど適当になっていき、最後には服も着ておらず、頭に毛が3本生えただけの血色の悪い老人のような姿になってしまったという。ただ、「おじいちゃん」である飼い主の女性は、顔の輪郭が米粒のようだと高校生の頃に友達にいわれて以来、米粒キャラを自称しており、『俺、つしま』の中でもアイデンティティとして米粒のような顔かたちだけが残されている。
出版社が必死にチェック SNS発猫漫画のポテンシャル
SNS発の作品を書籍化するのには、いくつかのメリットがある。フォロワー数、リツイート数、「いいね」や「お気に入り」といった数字が人気の指標となり、わかりやすいということがまず挙げられる。 またSNSに投稿される作品は、フォロワーがリツイートしたことでたまたまタイムラインに流れてきたものが目に留まり、何気なく「見た」(読むというより)結果、気に入って、自分もリツイートするなりお気に入りに入れるなりするといったケースも多いだろう。熱心な読者でなくても、拡散に協力することができるというわけだ。 フォロワー数やリツイート数は、出版社にとっては書籍化に際し購買者数の目安にもなる。全てのフォロワーが購入するとは限らないが、ある程度の予測がつくため、書籍化に向けて社内でプレゼンテーションをする際にも、数字で説得力を持たせることができる。 SNSの特性を利用して、芸能人や著名人、プロモーターのような背後の仕掛け人が拡散し、リツイート数が伸びるように動いている様子も伺える。