45人死傷の相模原事件、植松聖死刑囚が拘置所のチェックをくぐり抜けた作品とは
死刑が確定した元被告(死刑確定者)と、死刑判決を受けた後も裁判を求めている被告の絵画などを展示する「死刑囚表現展 2023」が11月3~5日、東京都中央区の松本治一郎記念会館で開かれる。死刑囚の心の内やどのような人間かをうかがい知る機会となりそうだ。2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が死傷した事件の植松聖死刑囚(33)は、収容先の東京拘置所から、自作の絵やイラストを所外に出すことを禁止されながらも応募してきたという。どんな作品なのか。(共同通信編集委員=竹田昌弘) ▽相模原事件の絵でもめ、色紙に文字 表現展の事務局によると、2005年から始まったこの展示会は今回で19回目となる。今回は、死刑確定者ら15人の約280作品を展示する予定。 植松死刑囚が応募してきたのは、いずれも色紙いっぱいに黒い文字で文章を書き、赤い手形を押したり、着色した図形などを書き込んだりした5作品。それぞれ①「相模原事件」②「即時抗告」③「無理心中」④「大麻取締法」⑤「死刑執行」―というタイトルが付けられている。①は事件に関する感想、②は再審請求を棄却され、即時抗告した事情をそれぞれ記した。③と④に書かれているのは、無理心中と大麻取締法について考察した内容。⑤は「死刑反対者は『殺人だ!』といいますが…」で始まり、私見を述べている。
関係者によると、植松死刑囚が絵などを所外に出すことを禁じられたのは、相模原事件をテーマに描いた絵を巡り、東京拘置所側ともめたためという。2022年の表現展には、多くの色を使い、頭蓋骨が爆発したような絵などを寄せた。今回はその相模原事件の絵を応募しようとしていたのかもしれない。 ▽首に絞縄「死ぬわけにはいかない」 大阪で2015年に起きた中学1年男女殺害事件の溝上(事件当時の旧姓山田)浩二死刑囚(53)が便せんに描いた作品は、200点を超える。そのうち性別不明の人物が大きく開けた口元で両手を拡声器のように広げている絵は、叫んだ内容が黒塗りされている。 事務局によると、収容先の大阪拘置所が「刑事施設の規律および秩序を害する結果を生ずるおそれがある」として、黒で塗りつぶした。黒塗りされたのは、溝上死刑囚が山田姓のときに養子縁組し、現在は末期がんで入院中の山田(旧姓松井)広志被告(49)へのメッセージという。山田被告は2017年に名古屋市で夫婦が殺害された強盗殺人事件の差し戻し審で死刑を言い渡され、控訴している。