変わりゆく補強、新トライアウトは人間性も見てほしい 野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志
3年目のプロ野球現役ドラフトが終わった。2022年の初年度は意義を問う声も聞かれたが、注目度は年々高まり、とても楽しみな行事になってきている。 今年は投手が9人、捕手1人、内野手3人。特に今回移籍が決まった選手を見ると、環境が変われば、力を発揮できる、力があるからこそ他球団に行かせてあげたい…。そんな球団の思いや期待を強く感じさせる選手が多く見受けられた。 昨年の選手では、日本ハムに移籍した水谷瞬外野手がそうだった。ソフトバンク時代、練習で一人だけいつも先頭で速く走る選手がいて、それが水谷だった。全く1軍で使われず、気になっていたが、今季の活躍は特に前半は目を見張るものがあった。 他にも、ロッテからDeNAに移籍した佐々木千隼(ちはや)投手、中日からオリックスに移籍した鈴木博志投手らが奮闘した。前年より成績を伸ばし、活躍した選手がいたことを考えると、来季も新天地で発奮し、今季以上の成績を残す選手は出てくるだろう。 僕らの現役時代は、トレードに出したところで活躍したら困るとか、なぜ放出したのかなどと、球団は責任追及されたものだが、補強の一つとして大きな行事となりつつある現役ドラフトは、新天地でチャンスをつかみ、大きな転機となるいいシステムである。 一方、実施の意義が問われ続けていたのが合同トライアウト。日本野球機構(NPB)が主催し、01年から12球団が持ち回りで実施してきたが、トライアウトの結果による選手獲得は減少。廃止が検討されていた中、日本プロ野球選手会が、12月の定期大会で来年からトライアウトを引き継ぐことを決めた。 時期や実施方法の大枠は踏襲。独立リーグや社会人野球などへの斡旋(あっせん)にもつなげるほか、選手によっては現役に一区切りつける機会という意味もある。 こうした経緯から感じるのは、決してプレー面だけではなく、マナーや礼儀、人との接し方、指導者としての素質など、プロで培ったさまざまな経験を通して人間性までを見てもらいたいということだ。 トライアウト廃止に待ったをかけた選手会の決断はすばらしかったと思う。トライアウトは再出発のために切り替えるいい機会である。人柄や性格も含めて、球団がいい人材を見つける場になってくれたらと思う。(野球評論家)