歴史的な衆院選 選挙戦から見えてきたもの
◆裏金事件だけではない! 自民党敗北、最大の理由
自民党にとっての厳しい選挙戦は、裏金事件の影響だけではなかったようです。有権者に話を聞いてみると、「クリーンな人を選びたい」「政権交代を望む」という声があった一方で、裏金事件そのものに関心がないという人もいました。若い人の中には石破総裁が下した裏金関係議員の処遇方針を知らないと話す人もいたぐらいです。
では、何を投票の基準にしたのでしょうか。キーワードは「政策本位」、子どもを持つ母親からは「子育て政策」「次世代に向けた政策」という声が聞かれました。高齢者からも「もっと経済対策が聞きたかった」という声もありました。 しかるに、自民党の街頭演説はどうだったか、終盤の演説では、石破総裁は裏金問題のおわびから始まりました。「ルールを守る」と言いますが、これ自体は政策でも何でもないわけです。さらに、政権交代を訴える野党に対し、「日本の国を任せるわけにはいかない」と批判しました。いわば「批判合戦」となり、他党の仕掛けに乗ってしまった感があります。経済対策についても、補正予算に言及したものの、具体策には乏しい内容でした。党側は「言うべきことを言わない」、有権者は「聞きたいことが聞けない」……負のスパイラルに入ってしまったことが、自民党の最大の敗因だったと私は考えます。
野党は躍進を果たしましたが、中でも国民民主党は4倍の28議席を獲得しました。「手取りを増やす」というわかりやすいフレーズで展開した経済対策こそ、有権者が知りたいこと、聞きたい政策だったのではないか…それが如実に現れていたと言えます。比例代表の総得票数に限れば、国民民主党は日本維新の会、公明党を抜き、同じく経済対策を前面に押し出したれいわ新選組は共産党を上回りました。
◆街頭演説で繰り広げられた“異様”な光景
今回の選挙戦、街頭演説では異様な光景が展開されました。特に自民党幹部が応援に入った演説はどこに行っても警察官の群れがありました。制服警察官に私服のSP。演説会場は鉄の防護柵で聴衆のゾーンが区切られ、演説を聞く人はゾーンに入る前に、金属探知機による手荷物検査を強いられました。これはもちろん報道関係者も含まれます。検査は街頭演説だけでなく、会議室などを使った個人演説会でも同様でした。東京・豊洲で行われた選挙戦最後の石破総裁の演説では、前の道路=公道が蛇腹型のバリケードで封鎖されるという徹底ぶりでした。