AI検索「Perplexity」がかなり便利だったので紹介します
Perplexity.aiは、2022年8月にスタートした生成AIを活用した対話型検索エンジンだ。 【もっと写真を見る】
「ChatGPTはすぐに嘘をつくから調べものには使えない」という意見をよく聞くが、これには大きな誤解がある。 そもそもChatGPTの心臓部である大規模言語モデル(LLM)は、膨大な知識を元にテキストを「生成」する仕組みだ。 逆に言うと、知識として持っていないことは一切わからないので、知らないことについて説明を求められても能力的に不可能なのだ。 だから、知識にない質問をされると答えられないだけでなく、苦し紛れに幻覚(ハルシネーション)を起こしてしまう。これが「すぐに嘘をつく」と言われる理由だ。 結論を書いてしまうと「ChatGPTは検索ツールではない」のだ。むしろ「ChatGPTがいちばん苦手とすることが検索」なのだ。 今回はこの欠点を補い、AIを活用した新しい検索の形を実現するという触れ込みのサービス「Perplexity.ai」を紹介していく。 Perplexity.aiとは Perplexity.aiは、2022年8月にスタートした生成AIを活用した対話型検索エンジンだ。元OpenAIのアラヴィンド・スリニヴァサ氏が率いるエンジニアチームによって創設され、2024年の資金調達ラウンドで、アマゾン共同創設者のジェフ・ベゾス氏やNVIDIAなどから7360万ドルを調達。評価額は5億2000万ドルに達している。 なぜここまで注目を集めているのだろうか。実際に使って検証してみよう。 アカウントを作成しなくても利用可能 Perplexity.aiはアカウントを作成しなくとも検索を利用することができる。百聞は一見にしかず、まずは検索結果を見てみることにしよう。 プロンプト:Perplexityについて教えて 結果はこのように表示された。たった一行のプロンプトにもかかわらず大量の情報が構造化されて見やすく表示されている。スピードも遅いと感じることはなくまずまずだ。 一番上には、検索結果を生成するのに利用したソース(ウェブページ)が表示されており、クリックすると別ウィンドウに表示される。 グーグルなど従来の検索エンジンでは、検索結果としてこのような関連したウェブページへのリンクを表示するだけだったので、ユーザーはそれぞれのページを開いて内容を確認する必要があったが、Perplexity AIはLLM(デフォルトはGPT-3.5)を使ってこれらのページの内容を要約してくれるのだ。 こちらがPerplexityが用意した要約だ。小見出しや箇条書きで情報が構造化されているため非常に見やすい。また、要約文中の小さな数字をクリックすると、その情報の出典元であるウェブページが開くので、情報の信頼性を確認できる。 最下部には小さなアイコンなどがいくつか表示されている。 1. (共有):この検索結果を表示するURLがクリップボードにコピーされる。 2. (書き直す):別のLLMで要約をし直すことができる。(有料プランに契約が必要) 3. (コピー):検索結果をコピーする 4. (クエリを編集):プロンプトを編集して検索をやり直すことができる。 5. ()をクリックすると、「ソースを見る」「レポート」の2つの項目が表示される。 「ソースを見る」を選ぶと、この検索結果で使用されたページ(ここでは5個)がすべて表示され、クリックするとそのページに飛ぶことができる。なお、ここに表示されているのは最上部に表示されたものと同じページだ。 情報ソースとしてあまり信頼できないページが表示されていた場合は、チェックボックスにチェックを入れて「◯つのソースを削除」をクリックすると、そのページの情報を使用せずに新たに検索結果を表示してくれる。これはとても便利な機能だ。 「レポート」を選ぶと、検索結果に対してフィードバックを提供することができる。 検索結果の右側には「画像を検索」「動画を検索」「画像を生成する」の3つのボタンが表示されている。 「画像を検索」をクリックすると、Perplexity AIが生成したテキストの検索結果に加え、関連する画像を見つけて表示してくれる。テキストだけでなく視覚的な情報も得ることができるのだ。 さらに「動画を検索」をクリックすると、関連するYouTube動画を表示してくれる。なお、「画像を生成する」の利用には有料プランの契約が必要になる。 アカウントを作成して初期設定 このようにユーザー登録しなくとも基本的な機能は利用可能だが、登録することで「Pro Search」をはじめとするさらに便利な機能も使えるようになる。登録だけなら無料なのでここは迷わずアカウントを作成してしまおう。 サイドバーの「新規登録」または「サインイン」をクリックで登録できる。 登録はGoogleまたはAppleのアカウント、メールアドレスのいずれかがあればよい。 登録が完了すると、サイドバー左下にアカウント名が表示される。まずは「歯車」アイコンをクリックして設定画面を見てみよう。 言語を「Japanese」にすればUIも日本語表示となる。 「AIデータ使用量」、これはおそらく「AIによるデータの使用」の誤訳だが、このチェックを外すと入力したプロンプトがモデルのトレーニングに使用されないようになる。機密情報を入力する可能性がある場合は外しておこう。 画面上部の「プロフィール」タブを選ぶと、自分のプロフィールを作成できる。住んでいる場所や興味のあることを書いておけば、それを考慮した検索結果が表示される。ChatGPTの「Custom Instructions」のような機能と思えばいいだろう。 「Preferred response language」を日本語にしておけば、常に回答も日本語で表示されるようになるようだ。 設定したら忘れずに「保存」をクリックしよう。 「フォーカス」を使いこなす 「フォーカス」機能は、Perplexity AIの検索対象を、インターネット全体から必要な情報に絞り込む強力なツールだ。例えば、学術論文、特定業界の情報、ユーザー生成コンテンツなど、目的に応じて検索範囲を限定できる。これにより、ノイズの少ない関連性の高い検索結果を効率的に得ることができるのだ。 まずは普通に検索してみよう。ちなみに「Transformer」とはChatGPTなどのLLMの核となる技術だ。 プロンプト:Transformerってなに? 検索結果はこちら。「ソース」を見ると日本語の解説記事が5件参照されている。 では入力画面に戻って「フォーカス」をクリックしてみよう。検索対象を指定する6つの項目が表示されるが、デフォルトではインターネット全体を対象にする「All」になっている。 そこでフォーカスを公開された学術論文に絞る「Academic」に変更して検索し直してみよう。 ソースを見るとすべて英語の学術論文になっている。回答は日本語で表示されるので安心だ。 次は「Writing」で試してみよう。これは検索を一切せずLLMの知識だけで回答を生成するモード、つまりChatGPTやClaudeといった普通のLLMと同様の挙動となる。無料版Perplexityが使用しているLLMはGPT-3.5なので無料版ChatGPTと同等の性能ということになる。 こちらが「Writing」モードの回答だ。ソースが一つも表示されていないことがわかる。 このモードでは話し相手になってもらったり、ストーリーを作ってもらったり、ChatGPTと同じような使い方もできる。 フォーカスメニューには他にも、Wolfram | Alpha、YouTube、Redditが用意されている。 個人的にはアプリやガジェットなどの本国での評判を調べることができるRedditがうれしい。 ちなみに「Reddit」モードで「Transformerってなに?」と質問すると。 検索履歴は「ライブラリ」に保存される 「ライブラリ」は検索履歴を自動的に保存・整理してくれる機能。スレッドごとにタイトルや要約が生成され、必要な情報をすぐに見つけ出せる。 過去の検索結果を参照するだけでなく、ライブラリ内の情報を検索することもできるので、蓄積された知識を効率的に活用できる。 検索履歴はサイドバーにある「ライブラリ」に表示される。 「ライブラリ」をクリックするとすべての履歴(スレッドと呼ぶ)をリスト表示で見ることができる。さらに全スレッドをまたいだ横断検索も可能だ。 「コレクション」で結果を整理 「コレクション」は、検索履歴やノートを整理・蓄積する強力な機能だ。関連する情報をグループ化し、プロジェクトやトピックごとにまとめることができる。 自分用のナレッジベースとしてだけでなく、他のユーザーとの共有や公開も可能。蓄積した知識の横断検索などの機能も充実している。 コレクションを作成するには、ライブラリ画面右側の「+」もしくは「はじめよう」をクリック。 コレクション作成画面が表示されるので、タイトルや説明を入力して「作成」ボタンをクリックする。 絵文字を付けることができるのも魅力だ。コレクションごとに絵文字を変えることで見分けやすくなる。 作成されたコレクション。まだなにも登録されていないので「No Threads」と表示されている。 スレッドをコレクションに追加するには、「+」をクリック。 追加したい「コレクション」をクリックすれば登録完了だ。 単独のスレッドを表示している場合は、右上にある「+コレクション」をクリックする。 登録されると、コレクション名が表示されるようになる。 対話形式で検索できる「Pro Search」 「Pro Search」は、Perplexity.aiの目玉とも言える対話型の検索機能だ。通常の検索エンジンとは異なり、ユーザーとの対話を通じて検索意図を理解し、より的確な回答を提供してくれるという。 無料プランは4時間ごとに5回まで、有料プランは1日あたり600回までPro Searchを利用できる。 Pro Searchを利用するには、「Pro」と書かれたスイッチをクリックすればよい。 プロンプト:誕生日プレゼントの相談に乗ってください プロンプトはあえて詳細を書かない感じで試してみよう すると、検索結果の代わりに「誕生日プレゼントの相談ですね。何か特定のカテゴリーまたは興味のあるものがありますか?」という質問が表示されたので「手元に残るもの」と入力して「Send」をクリック。 なお「スキップ」をクリックすれば質問をスキップできるが、それではなんのためにPro Searchを選んだのかわからない。 すると今度は「誕生日プレゼントで手元に残るものを探しているんですね。予算はどのくらいですか?」との質問が表示されたので「1万円以内」と答えて「Send」をクリック。 回答が表示された。美容・コスメグッズ、インテリアグッズ、デジタルアイテム、100均アイテムで手作り、など様々なアイディアが提示されている。 どのような検索をしたのか知りたい時は画面上部の「Pro Search」と書かれた部分をクリック。 「10000円以内 誕生日プレゼント 手元に残る」「10000円以内 誕生日プレゼント」「10000円以内 誕生日プレゼント 人気」といったワードで検索されたようだ。 もちろん手動でこのようなワードを入れて検索することも可能だが、対話形式で自然にこのような検索ができるのは魅力だ。 次は日帰り旅行の行き先を考えてもらうことにしよう。 プロンプト:来週末日帰り旅行に行きたいです。おすすめを教えて プロンプトは上記だ。あえて出発地の情報は書かなかったが、おそらくプロフィールに入力した情報から東京発だと理解してくれるだろうと期待。 ばっちり東京から日帰りできる場所を紹介してくれた。 検索ワードは「東京から日帰りで行ける歴史的建造物」「東京から日帰りで行ける自然景観」「東京日帰り旅行おすすめスポット」の3つだ。 もちろんさらに質問を重ねることもできる。 しかし「京急線の神保町駅」という架空の駅からの経路が表示されてしまった。やはりPerplexity.aiと言えど中身は「GPT-3.5」なのでハルシネーションからは逃れられないということか。 とは言え生成AIは現在進行系の技術、いつか改善されることを祈ろう。 有料版はさらに多機能 以上、無料で利用できる機能だけに絞って解説してきたがこのボリュームである。次回は課金することで利用できるさらなる便利機能を紹介する予定だ。 田口和裕(たぐちかずひろ) 1969年生まれ。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイト等を中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。2019年にはタイのチェンマイに本格移住。 新刊発売中:「生成AI推し技大全 ChatGPT+主要AI 活用アイデア100選」: 文● 田口和裕