皇位継承の重要祭祀「大嘗祭」 五穀豊穣を祈る意味とは?
一連の皇位継承の重要儀式を締めくくる「大嘗祭」(だいじょうさい)が14日夕方から15日未明にかけて行われます。大嘗祭とは、新天皇が即位後初めて臨む「新嘗祭」(にいなめさい)をいい、一世で一度の重要な祭祀とされます。新嘗祭と同様、お米などの五穀豊穣や国家の安寧、国民の平安な生活を祈願します。一方で、大嘗祭は憲法の政教分離の原則との整合性が議論になることがあります。どのような皇室行事なのでしょうか。
●お米だけではなく粟や稗も
大嘗祭は、3つある皇位継承の重要な儀式・祭祀の1つです。ちなみに1つ目は、5月1日の皇位継承を確認した「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」、2つ目は先月22日の即位を内外に披露した「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀」、そして3つ目が今回の「大嘗祭」です。新嘗祭は毎年11月23日ですが、大嘗祭は11月14日、15日にかけて執り行われます。 大嘗祭を行うために、大嘗宮(だいじょうきゅう)と呼ばれる建物が皇居の東御苑に造営されます。東日本を意味する悠紀殿(ゆきでん)、西日本を意味する主基殿(すきでん)を中心とした建物群です。 大嘗祭では、天皇陛下がそれぞれの地域でその年に収穫された米や粟(あわ)などを、皇祖とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)とすべての神々に供え、自らも口にします。 天皇陛下は白い御祭服を着用し、14日午後6時半頃から悠紀殿で、15日午前0時半頃から主基殿で「大嘗宮の儀」に臨み、五穀豊穣と国民の安寧などを祈られます。 皇室の歴史に詳しい京都産業大学の所功名誉教授は、大嘗祭についてこう説明します。「日本人が弥生時代の昔からお米を中心に生きてこられたのは神々、自然のおかげだということで、毎年『新嘗祭』を行っているが、これを大規模にやるのが『大嘗祭』。そういう意味では『収穫感謝祭』と言ってもいい」 「五穀豊穣」が祈られることに関しては、米だけではなく粟などの重要性も強調しました。 「お米は水田で取れるものだが、日照りなどで十分に取れない場合、昔の人は粟や稗(ひえ)のほか、きび、豆などを食べてきた。畑で栽培できるもの、それをひっくるめて『五穀』というが、『五穀豊穣』とは決してお米のことだけではなくて、そういう雑穀といわれる粟、稗、きび、豆のようなものも日本人が生きていくには大事なものだという思いがある。だから『五穀豊穣』を祈願する」 こうした作物の収穫は天候にも左右されます。「平常なときもあれば、暴風雨のようなときもあり、非常時のことも考えておく必要がある。お米だけではなく粟も用意しておくという知恵が、毎年の新嘗祭もそうだが、大嘗祭に込められている。それを神様にお供えするのみならず、お下がりを天皇自身が召し上がられる」