寺脇康文には刑事役がハマる!型破りな刑事を演じた初主演ドラマ「853 刑事加茂伸之介」
頼りがいのある雰囲気と温かな笑顔が魅力の俳優・寺脇康文。人気ドラマ「相棒」シリーズの主人公・杉下右京の初代相棒である亀山薫を演じるなど、刑事役に定評のある寺脇がTVドラマ初主演を飾ったのが、2010年放送の「853 刑事加茂伸之介」だ。 【写真を見る】寺脇康文のTVドラマ初主演作「853 刑事加茂伸之介」 10年ぶりに古巣の京都府警捜査一課に舞い戻ってきた刑事・加茂伸之介(寺脇)。「犯人を追い詰めるためには多少のルール違反などは当たり前」「始末書をどれだけ書かされても、刑事のプライドに賭けて必死に事件を追い続ける」それが加茂の信条だった。そんな彼が所属することになった捜査一課強行犯六係 武藤班は、法律を何よりも重んじる係長・武藤勇作(田辺誠一)を筆頭に、武藤を信頼する佐々木雪子(富田靖子)、真島航輝(戸次重幸)、酒井十一(林剛史)といった若手と、ベテランの浜育実(菅原大吉)、そして彼らをサポートする綾松なみえ(新谷真弓)という面々が揃っていた。着任早々に破天荒な仕事ぶりでチームの和を乱す加茂に振り回される武藤班だったが、少しずつ加茂の情熱に影響を受けていく...。 寺脇が演じるのは、昭和や1970年代の熱さを持つ刑事・加茂伸之介。刑事という職業には似つかわしくないと思われる軽やかな立ち居振る舞いと人懐っこい笑顔で、人との距離を一気に詰めるタイプの加茂を、寺脇は強めのパーマヘアとノーカラーのライダースジャケット、ジーンズといったスタイリッシュなスタイルで表現した。必要とあらば規則を破るほどのフットワークの軽さでさまざまな事件の真相に近づいていく加茂は、上司の武藤から"目の上のたんこぶ"として疎ましがられるも、事件解決のために現場に足を運び、目撃者を訪ね歩いては話を聞くといった、古き良き熱血刑事のやり方で事件に向き合う。時に犯人と格闘したり、商店街を爆走しては、ビルの屋上まで全速力で駆け登ったりと、体力が求められるタフな撮影にも、当時47歳の寺脇は果敢に挑戦。見事なアクションシーンを披露した。 そして、プライベートでは離婚した妻のもとで暮らす娘を思う父親の顔も持つ加茂の一面を表現する際は、仕事の際に見せる笑顔よりも、さらに柔らかい表情を浮かべる。娘からのメールに返信しているシーンでは、加茂の子煩悩ぶりがひしひしと伝わってくる。 寺脇演じる加茂のパワフルな仕事ぶりが最大の見どころの本作だが、法令順守がモットーの武藤班の面々が、少しずつ加茂に影響されている過程も見逃せないポイント。武藤に同期以上の感情を抱いている雪子は当初、加茂を怒鳴りつけるほどに敵視していたものの、その情熱的な捜査ぶりや事件解決に導いていくまでの鮮やかな手腕に触れるうちに、柔らかな笑顔を見せるまでに変化。そして、最も敵対心を露わにしていた武藤も、最後は加茂へ信頼のまなざしを向けるまでになる。そんな周囲の人物の変化を引き出すに値する加茂のがむしゃらさを、寺脇は圧倒的な熱量で演じきった。 どこかコミカルな熱血刑事が事件解決と共に事件関係者の心も救っていく。そんな古き良き昭和の刑事ドラマの系譜を継ぐ本作。熱い物語と役者の熱演で心を震わせたいと思う人に見てほしい一作だ。 文=中村実香
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