自衛隊「注目されない方が幸せ」 防衛大学校訓練部長東良子海将補(金沢出身)
●本社インタビュー 防衛大学校訓練部長の東(あずま)良子海将補(50)=金沢市出身=は1日までに北國新聞社のインタビューに応じ、能登半島地震での経験から「いつ、どんな災害が起きても対応できる隊員を育成していく」と語った。「自衛隊が活躍する時は国が不幸な時。注目されない方が幸せなこと」と明かし、指導者として「本来は国民の目に触れにくい国防の任務に、どうやりがいを見いだしてもらうかが大事だ」と力を込めた。 【写真】能登半島地震について語る東海将補 東海将補は海自2人目の女性将官で、女性として初めて練習艦「せとゆき」の艦長となり、海上幕僚監部での勤務も経験。昨年8月、約2千人の学生を指導する防衛大訓練部長に就いた。 ●故郷が被災地に 昨年末、金沢に帰省し、地元を離れたところで能登半島地震が発生。19人いる石川出身の防衛大生や職員はいずれも無事だったが、「故郷が被災地と呼ばれることがこんなにもつらいのかと初めて実感した」と振り返った。 これまで災害派遣の主役は陸自だった。ただ、能登半島地震では陸路が寸断され、被災地に入ることさえ難しく、海自も対応にあたった。現場で活躍する自衛官を目にし、被災地入りを志願する学生が増えているが、「本当は注目を浴びることがない方が幸せなことなんです」と複雑な胸の内を明かす。 ●本紙で合格知る 東海将補は金沢市金石中、星稜高を経て防衛大に入り、1996年に女性1期生として卒業した。当時は「試験慣れするために気軽に受験しただけ」で、女性1期生になることも知らなかった。「合格を知ったのは北國新聞の夕刊でした」と懐かしむ。 当時、防衛大は「男の園(その)」で、女性の存在は異質だったという。事あるごとに「女性初」ともてはやされる一方、少しの失敗で「女子学生だからな」とひとくくりにされることが嫌だった。初の女性訓練部長として母校に戻った今は「男女関係なく一人の個人として学生と向き合う」ことを心掛けている。 階級が絶対である組織の中に身を置きながらも「階級でものをいう人にはなりたくない」。「国民の信頼にたる自衛官」を育て上げるべく、試行錯誤の日々を送る。