つらさを抱える君へ(10月6日)
9月12日付福島民報に、「新学期、つらさ抱える君へ」という見出しの記事が掲載されていた。 そこで紹介されていたのは、劇作家鴻上尚史の著書「君はどう生きるか」(講談社)だった。中学時代、「男子生徒は丸刈り」という校則に反発した鴻上は、説得力のある理由を聞けず、理不尽な思いをしたことから、十代の子どもたちが直面する問題に、自身の言葉で寄り添い一緒に悩んできた。それを一冊にまとめた本である。 近年夏休み明けが近づくと、人間関係などが重みになり、つらさを抱えて過ごす子どもたちへ向けて、同様の記事をよく目にするようになった。 2006年朝日新聞が特集した「いじめられている君へ」にも鴻上は文章を載せていて、それをふまえた上で、この本には以下の記述がある。 いじめに対する考え方は変わってきている。それでも、今、君がいじめられているのなら、「逃げること」。「苦しくてどうしようもなくなったら、とことん逃げてください。生きている限り、なんとかなります」と鴻上は書いている。
同じ特集に、さかなクンの文章も掲載されていた。当時読んで心に残っていたので、「広い空 広い海」と改題されたものが載る「さかなクンの一魚一会(いちギョいちえ)」(講談社)を紹介したい。 さかなクンが中学1年生のとき、吹奏楽部で一緒だった友人がいじめにあい、誰も口をきかなくなった。その状態は、魚の世界と似ていたと書く。 メジナは海の中では仲良く群れで泳いでいるが、狭い水槽に一緒に入れると、一匹を仲間外れにして攻撃を始める。その一匹を別の水槽に移すと、残ったメジナは別の一匹をいじめ出す。小さな世界に閉じ込めたとたん、同じ種類同士でいじめが始まるのだという。 さかなクンは、仲間外れにされた子をさそって、魚釣りに出かける。海岸で一緒に糸をたれているだけで、その子はほっとした表情になっていった。 さかなクンはいう。「ぼくは変わりものですが、大自然のなか、大好きなさかなに夢中になっていたら、いやなことも忘れます」と。