30代で「脳梗塞→寝たきり」から奇跡の復活を遂げた男……病床で彼を支えた意外な「命綱」と「回復の決め手」
サイドレールで介助者が腰を痛めることがある
先ほど私は「サイドレールが命綱だった」と書きましたが、体に不自由を抱えた患者さんや高齢者のなかには、きっと私のように「サイドレールなしでは生活できない」という方もいるに違いありません。 しかし、スチール製のパイプを組み合わせてつくられたサイドレールはそれなりに重量があります。一度、二度、抜き差しするくらいなら、腰にかかる負担は大したことはありません。若い人はもちろんのこと、中高年や腕力に自信のない女性であっても、動かすのはそう難しいことではないでしょう。 しかし、介助は毎日何度もくり返されるものです。介護施設であれば、職員は一日の間に5回、10回、あるいは20回サイドレールを動かさねばならないときもあります。そんなに何度も「抜き差し」を反復すると、腰には負担が少しずつ蓄積していき、やがて腰痛などケガの原因になりかねません。 ましてや腰痛やヘルニアを抱えた人の場合は、うっかり力任せに抜こうとすると、その瞬間に腰を痛めるリスクすらあります。患者を守るためのサイドレールで介助者が体を傷めてしまうのは、まさに悲劇としか言いようがなく、何とか防ぎたいところです。 私が自著に、サイドレールを設置したままでもできる介助法を載せたのは、サイドレールのリスクと大切さ両方を、身をもって知っていたからでした。記事後半では、そのような「サイドレールあり」でできる簡単な介助の実技を1つご紹介します。 後編記事『 介護の手間をひとつ減らす! ベッド脇に「サイドレール」をつけたままできる「腰にやさしい」寝返り介助』へ続く。
根津 良幸(埼玉医科大学客員教授)