井上尚弥は「大谷翔平と同じ道歩む可能性」 全米ボクシング記者協会会長に聞く
フルトン戦に衝撃
全米ボクシング記者協会(BWAA)が選ぶ昨年の最優秀選手賞に、スーパーバンタム級世界主要4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が日本人で初めて選出された。6日にニューヨークで行われた表彰式では、井上尚に自身のニックネームを示す「モンスター・コール」が起き、盛大に歓迎されたのが印象的だった。井上尚は「(日本人初受賞の)重みも感じたし、今まで出られなかった表彰式もたくさんあったけど、こうして来てみて重要性も感じた。改めて来て良かった」と刺激を受けた様子。多くの関係者から写真撮影を求められ、世界的なボクシングプロモーターのボブ・アラム氏は井上尚の隣席に座ることを希望するなど、主役の輝きを放っていた。 【写真】スーパーバンタム級世界主要4団体統一王座タイトル戦で勝利し、歓声に応える井上尚弥=5月6日、東京ドーム BWAAのジョセフ・サントリキート会長は井上尚に電話で受賞を伝えた際の様子をうれしそうに回顧する。「とても素直に喜び、感謝を表してくれた。米国の多くのアスリートは少し甘やかされているようにも感じているから彼の謙虚さが新鮮だったし、好きになった」。そして、熱い口調で続けた。「この賞を受賞したほとんどのボクサーが将来的に殿堂入りを果たしている。井上も今すぐ殿堂入りできる」。数々の名ボクサーを取材してきたサントリキート会長に、日本が誇る「モンスター」の魅力と本当の評価を聞いた。(時事通信ニューヨーク総局 岡田弘太郎) サントリキート会長は昨年の試合の中でも、7月に世界2団体王者スティーブン・フルトン(米国)にTKO勝ちして4階級制覇を遂げた試合に衝撃を受けたという。自身と親交の深いフルトンの強さを誰よりも知っていただけに、この一戦を機に米国内での評価がさらに高まったと指摘する。 「昨年は本当に素晴らしい1年だった。2人の質の高いボクサーを倒して、類いまれな才能の持ち主であることを示した。特に無敗だったフルトンを止めたのはとても印象的だった。井上は複数階級を制覇しており、世界に認知されているボクサー。詳しい投票結果は明かせないが、他に大差をつけての受賞だったと言える」 1938年から表彰している歴史があるBWAAの最優秀選手賞。過去の受賞者にはモハメド・アリ、マイク・タイソン、フロイド・メイウェザー(いずれも米国)、マニー・パッキャオ(フィリピン)といった名選手が名を連ねている。 「井上は歴史をつくった。日本人初の受賞ということは日本の人々にとって大きな誇りになるだろう。そして、この賞を受賞したほとんどのボクサーが将来的に殿堂入りしている。井上も今すぐ殿堂入りできる。彼はモハメド・アリやジャック・デンプシーといった名ボクサーの仲間入りを果たした。これから複数回、この賞を受賞するような気がしてならない。そのことを自信を持って言えるよ」 長い歴史の中で数々の名ボクサーを生み出してきた米国でも、井上尚は特別な存在と捉えられているようだ。 「間違いないね。これは必ず記事にしてほしいんだけど、井上がニューヨークでの表彰式に出席すると決まった後、世界各地から参加を希望する声が多く集まった。これまでも素晴らしいイベントではあったけど、井上が参加することである意味『大事件』になった。その反響には本当に驚いている。井上は家族を大切にし、自分の技術を向上させることに情熱を注ぎ、そして何よりボクシングを心から愛しているように見える。そんな彼のことが私は大好きなんだ」