終電時間まで帰路照らす 富士・吉原駅前の古民家カフェ 地元電機製作所が運営 社長「地域の“明かり”に」
JR東海道線と岳南電車の結節点になる富士市の吉原駅前に明かりをともそうと、同市の堀内電機製作所が築95年の古民家を改装したカフェ「jin cafe(ジンカフェ)」の運営に力を入れている。ウクライナからの避難民らをスタッフとして採用。店先の電灯は閉店後も、駅利用者の帰路を照らすために終電時間まで消さない。4代目の杉田光徳社長(50)は「地域を明るく照らしたい」と思いを語る。 同社は1949年の創業以来、制御盤などの製造販売を手がけ、飲食の経験は一切なかった。きっかけは、高校生時代に駅を利用していた杉田社長が約20年ぶりに見た真っ暗な吉原駅前。かつての活気とかけ離れた風景にさみしさを感じ、駅利用者が気軽に集える場所をつくろうとカフェ運営を決意した。 2021年、駅から徒歩1分の古民家を買い取った。建築当時の意匠を尊重してリノベーションし、24年4月に念願のカフェをオープン。コーヒーはサイホン式で提供し、疲れた人でも飲みやすいよう、あっさりとした味わいにこだわった。 杉田社長は「働きたくとも働く場所がなかなか見つからない人に、温かい職場環境を提供する。それも私たちが目指す〝明かり〟の一つ」と語る。杉田社長から店舗運営を任されている西山志乃店長(40)は「店名のジン(仁)は思いやりの心を大切に、と願いを込めて孔子の論語から名付けた。温かい雰囲気の店にしたい」と笑顔で話す。 目指すのは吉原駅前一帯の活性化。来年の夏には隣接するビルを改装し、IoTやAIの技術を取り入れた新規事業を立ち上げるという。
静岡新聞社