「空飛ぶクルマ」の製造本格化、電動垂直離着陸機(eVTOL)めぐる動向最前線
世界のeVTOL市場は中期で200~300億ドルへ
世界各地で開発が進む「空飛ぶクルマ」は、どの程度の市場規模が見込まれるのだろうか?グローバルリサーチ会社の「マーケッツアンドマーケッツ」は22年の調査で、同市場が30年までに234億ドル(3兆6,100億円)に達すると予想している。また、カナダとインドに拠点を置く「プレセデンス・リサーチ」の22年の調査によると、世界のeVTOL市場は32年までに約358億ドル(5兆5,300億円)に達する見通しだ。 スカイドライブの最高開発責任者(CDO)、Arnaud Coville氏は現在、世界の人口の75%が都市部に集中していることを指摘。東京の地下鉄は1日に700万便、タクシーは3万5,000台に上ることを挙げ、「その一部がeVTOLに移行するだけで、何年もの生産を支えることになる。これは東京だけの話で、世界に目を向ければどれほどの市場規模があるか想像してみてほしい」と述べている(スカイドライブのホームページより)。ただ、現在はまだ人口密度の高い地域でのヘリコプター運航が許可されていないことに言及し、「eVTOLの導入には、政治的支援がカギとなる」との見解を示している。 今年夏にパリで開催されるオリンピックでは、Volocopterが早速「空飛ぶタクシー」サービスを提供する予定。また、25年の大阪・関西万博でも万博会場と会場外のポートを結ぶルートで、空飛ぶクルマの有料運航が予定されている。 大阪・関西万博については、すでに23年2月に協賛企業も発表されており、ANAホールディングスとジョビー・アビエーションが「S4」、日本航空(JAL)が「VoloCiry」、丸紅が英「Virtical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)」の「VX4」、スカイドライブが「SD-05」を運航する予定。Volocopterはすでに、大阪・舞洲のヘリポートでプロトタイプ「Volocopter2X」の試験飛行を実施した。 上記以外にも、米ゼネラル・モーターズ、カリフォルニア州拠点の「Archer Aviation」、フロリダ州拠点の「EVE Air Mobility」、バーモント州拠点の「BETA Technologies」などの企業がeVTOL市場に参入しており、今年から26年にかけてサービス投入を目指している。競争の激化も予想されるeVTOL市場で、どこがキープレーヤーとなっていくのか、今後の行方に注目したい。
文:山本直子/ 編集:岡徳之(Livit)