「空飛ぶクルマ」の製造本格化、電動垂直離着陸機(eVTOL)めぐる動向最前線
「VoloCity」は設計・製造認可を取得、パイロット訓練も
そんな空飛ぶクルマが今年からいよいよ商用化される。Volocoputerは今年2月29日、VoloCityの製造について、ドイツの連邦航空局LBAから製造認証(POA)を取得したと発表した。 同機はすでに19年に設計認証(DOA)を取得しており、世界で初めてPOAとDOAを両方取得したeVTOLとして注目を集めている。これにより、VolocoputerはVoloCityの自社設計・製造に対する権限を獲得し、同機はプレシリアル製造段階(連続製造の前段階)に入った。さらに型式証明を取得すれば、顧客に製品を納入することが可能となる。 VoloCityは、パイロット1名、乗客1名の2人乗り。18個のローターが付いており、100個以上搭載されたマイクロプロセッサーと最新鋭のアシスタンスシステムが機体の高度やバランス、離着陸を制御する。 部品の合理化でコストが抑えられているほか、機体のメンテナンスや修理が容易にできる設計となっている。1回のフル充電での航続距離は35キロメートル、最高巡航速度は時速110キロメートルだ。 今年3月にはLBAからパイロットの飛行訓練許可も得た。年内の商用化に向け、LBAとの協力でVoloCityの飛行訓練プログラムの作成に取り組むという。
世界のメーカーが開発競争、エアバスもプロトタイプを発表
今年3月には、フランスのエアバスもeVTOL「CityAirbus NextGen」のプロトタイプを発表した。同機は4人乗りで、固定された翼に8基の電動ローターが付いており、小型飛行機に近い形状となっている。航続距離は80キロメートル、最高巡航速度は時速120キロメートル。今年後半には初飛行を目指している。
同プロトタイプのお披露目とともに、エアバスはeVTOLのシステムテストに特化したドイツのテストセンターも発表した。同センターへの投資はエアバスの長期戦略の一貫で、同社のeVTOLへの本気度を示すものとして注目される。同社はCityAirbus NextGenのほか、6基のローターで駆動する1人乗りのeVTOLも開発中で、同機の航続距離は50キロメートルとなる見通しだ。 米カリフォルニア州を拠点とする「Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)」の「S4」も4人乗りのeVTOLだ。NASA(アメリカ航空宇宙局)との共同で、騒音を極力抑えることに注力しており、23年11月にはニューヨーク市でタクシー飛行のデモンストレーションを実現させた。 トヨタ自動車が出資するほか、デルタ航空とも提携しており、現在はニューヨーク市の港湾当局や同市経済開発公社と、運航や空港でのインフラ開発について、話し合いを進めているという。同社は25年の商用運航を目指している。 一方、日本のスカイドライブが開発する「SD-05」は3人乗りで、12基のローターが付いている。最大巡航速度は時速100キロメートル。21年に国土交通省に商用機体の型式申請を行い、現在はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の施設で実験を行い、機体の安全性や環境適合性の証明活動を開始している。