韓国造船業界、13年ぶり「スーパーサイクル」か…エコ船舶の需要増加、トランプ発の防衛産業好材料(1)
「作業場3カ所が過負荷、積置場12カ所が飽和」。ソウル汝矣島(ヨイド)の1.67倍、サッカー場686カ所の面積の巨大ヤード内のスマート生産管理センターで商船建造現況を見ると、モニターに赤い警告表示が浮かんだ。しかし職員の表情は明るい。作業場の過負荷と積置場の飽和はともにヤードの生産能力比で作業量が超過していることを示す。要するに 不況時には見られなかった愉快な警告(?)表示だ。ハンファオーシャン巨済(コジェ)事業場の責任者チョン・ユイル氏は「現在すべての工程で物量が満杯であり、工程率が100%」とし「夜間の作業も増えた状況」と説明した。 10日昼、慶南最南端のハンファオーシャン巨済事業場ヤードは同社が受注した船舶を建造する各種工程で忙しかった。ヤードの核心はドックだが、ここは長さ530メートル、幅131メートルと世界最大規模であり、1ドックで4隻の液化天然ガス(LNG)運搬船が同時に建造されるなど商船9隻がすべてのドックを埋めていた。LNG船は1隻あたりの価格が今年上半期基準で2億7000万ドル(約3900億ウォン、約422億円)にのぼり、造船業界の代表的な高付加価値船種だ。 現場勤労者の海洋生産担当所属のキム氏(48)は「高付加価値船種を中心に受注が好調で作業者も忙しくなり、韓国造船業(以下、K造船)が活況であることを肌で感じる」と話した。高さ103メートル、幅206メートルの巨人クレーン4基は1基あたり一度に最大900トン規模ブロックを持ち上げてドックに移すが、この日、計70個ほどの大型ブロックを持ち上げた。不況時はその半分にもならない日が多かった。このほかクレーン約740基がブロックを移していた。 K造船は2008年がピークの「スーパーサイクル」以降、長い沈滞が続いた。HD韓国造船海洋、サムスン重工業、ハンファオーシャン3社が同時に営業黒字を出したのは2011年が最後だった。ところが今年は7-9月期まで累積営業利益がHD韓国造船海洋9350億ウォン、サムスン重工業3285億ウォン、ハンファオーシャン689億ウォンと、13年ぶりの3社同時黒字達成を控えている。HD韓国造船海洋は昨年4-6月期から6期連続、サムスン重工業は昨年1-3月期まで7期連続で黒字だ。さらに「大宇造船海洋」時代の2022年に1兆6136億ウォンの営業損失を出したハンファオーシャンまでが昨年と今年、大幅に実績を改善した。 このためK造船のスーパーサイクルがまた始まったのではという分析が出ている。造船業界では当初、グローバル船主の船舶入れ替え周期でみると2030年にスーパーサイクルが到来するという見方が多かった。船舶の寿命が最初の運航時点から25年ほどであるからだ。予想を覆してK造船が最近好況を迎えたのには2つの点が作用した。 まずはエコ船舶の需要の急増だ。エコ政策を強化中の欧州連合(EU)は今年から海運部門を炭素排出権取引制に含めた。国際海事機関(IMO)は2050年までにすべての船舶を炭素なく運航することにした。グローバル船主は従来の船舶をエコ船舶に入れ替えなければならない状況だ。LNG船のようなエコ船舶は燃料保存性能が重要であり、世界トップ水準の商船建造技術を備えたK造船がライバルの中国にリードしている分野であるため受注に有利だ。クラークソンズリサーチは昨年のグローバルLNG船発注量554万CGT(標準貨物船換算トン数)のうち韓国が約80%の441万CGTを受注したと集計した。 もう一つは防衛産業分野の需要急増だ。トランプ次期米大統領は先月、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と電話会談をしながら「米国造船業は韓国の協力が必要だ」と強調した。これは中国を軍事的に牽制するべき米国の造船業が衰退したことと関係がある。今年4月、米戦略国際問題研究所(CSIS)は「中国は現在、造船業生産能力が米国の約230倍であり、戦争時に艦艇を迅速に修理できる」とし、米国が同盟国であり造船強国の韓国との協力を強化するべきだと分析した。