TikTokが若者に害を与える「危険な依存物質」だとして、米各州が提訴─しかし、効果は薄い?
ドーパミンを誘発、若者の性的搾取…
10月8日、米国の13州と首都ワシントンDCが、TikTokを提訴した。「同社が安全への取り組みについて国民に虚偽の主張をしながら、子供や十代の若者に害を及ぼす中毒性のあるアプリを意図的に開発した」(米紙「ニューヨーク・タイムズ」)としている。 英紙「ガーディアン」によると、各州個別におこなわれた訴訟の大部分に共通しているのが、TikTokのアルゴリズムの問題だ。 メインの「おすすめ」フィードにユーザーの興味に合わせたコンテンツを表示するアルゴリズムが「ドーパミンを誘発」し、子供たちを「中毒性のある行動」に向かわせているという。 そして、そのコンテンツの中身について保護者はほとんど知ることができず、監督や時間制限が実質的に不可能になっている。これがテレビと異なる点だとワシントンDCの司法長官は述べる。 TikTok側は、年齢制限やスクリーンタイム制限、コンテンツ表示の適切なモデレーションなどをおこなっていると主張しているが、抜け穴が多くほとんど意味をなしていないという声が後を絶たない。子供が精神を病んだり、危険な動画に影響されて命を落としたりするニュースは、米国で連日センセーショナルに取り上げられている。 州によって異なる争点もある。カリフォルニア州は、アプリ上の美容フィルターが美の固定観念を強化し、「容姿に対する自己嫌悪」を助長していると主張する。 ワシントンDCは、TikTokライブのストリーマーに「投げ銭」を送る機能が実質的に「無認可の送金事業」であり、そこでは若者の性的搾取によってアプリが利益を得る構図が成立していると主張し、訴状のなかで「バーチャルストリップクラブのように運営されている」という強い表現を使用している。 【画像】SNSの影響で、子供たちのスクリーンタイムは急増している
崖っぷちのTikTok
米国における月間ユーザー数が1億7000万人にのぼるというこの人気アプリは現在、米国で集中砲火に遭っているように見える。 2024年4月には、親会社のバイトダンスが中国政府とのつながりを持っているとして、2025年1月までにTikTokを売却しなければ米国でTikTokを禁止するという法案が可決された。現在はこの法律が違憲かどうか争われているが、TikTokが禁止を回避するのは難しいというのが多くの専門家の見方だと米紙「ワシントン・ポスト」は報じる。今回の各州に起こされた訴訟はこれとは関係ないものだが、対応に追われる会社がより厳しい状況に置かれることは間違いない。