新NISAは「資産運用立国」実現に貢献しているのか?最新統計が示すその実態
日銀は12月18日、2024年9月末時点の資金循環統計を公表した。 家計の金融資産残高は前四半期(6月末)比1.5%減の2179兆円と、8四半期ぶりの減少を記録した。 【全画像をみる】新NISAは「資産運用立国」実現に貢献しているのか?最新統計が示すその実態 政府・与党が推進する「資産運用立国」に急ブレーキと見る向きもあるが、筆者はそのように考えていない。 6月末は日経平均株価が春先以来となる4万円の大台を突破、ドル/円相場は160円台で推移し、いずれも年初来高値をうかがう気配だった。 家計の金融資産については、年初から外貨を含めたリスク性資産の占める割合が高まり、6月から7月にかけてその勢いが最も強く感じられた。 しかし、7月末に日銀の金融政策決定会合で追加利上げが決定したのをきっかけに「植田ショック」と呼ばれる急激な円高と株価暴落が起こり、その後相場は大幅な回復を見せたものの、6月末のような勢いまでは取り戻せていない。 とは言え、次節で資金循環統計を詳しく見るとよく分かるように、9月末時点の家計部門の総資産は前年末に比べて増加し、円安および株高という基本的な状況に応じて株式や投資信託などへの資産のシフトも進んでおり、貯蓄から投資への流れに特段の停滞は感じられない。 また、日本証券業協会が10月21日に公表した「NISA(少額投資非課税制度)口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年9月末時点)」からも同様の流れが確認できる。 1~9月期のNISA利用状況(累計)を前年同期と比較すると、口座開設件数は160万件から303万件へと1.9倍増、成長投資枠での累計買付額は1.8兆円(当時は一般NISA)から7.5兆円へと4.3倍増、つみたて投資枠での累計買付額は0.9兆円(当時はつみたてNISA)から2.7兆円へと3.1倍増と、いずれも大幅に増えた。 資産運用立国「元年」は上々のスタートを切ったと評価すべきだろう。
新NISAの順調ぶり
今回発表された9月末の資金循環統計を、新NISA開始直前の2023年12月末と比較すると、その進捗は一目瞭然だ【図表1】。 家計の総資産は2144.5兆円から2179.4兆円へと1.6%ポイント増加。その内訳を見ると、円の現預金は1120.8兆円から1109.4兆円へと11.4兆円減、構成比で1.4%ポイント低下した。これだけ見ても、従来保守的な家計部門の変化を感じられる。 さらに、外貨預金や外貨建て投資信託などの外貨性資産は81.9兆円から98.5兆円へと16.6兆円増、構成比が0.7%ポイント上昇した。 前回6月末時点の資金循環統計ではこの外貨性資産の構成比率が4.6%に達し、統計開始以来の最高値を記録したが、今回9月末の4.5%という数字もほぼ同等の高い水準と言える【図表2】。 外貨性資産の増加をけん引したのはオルカン(全世界株式を投資対象とするインデックスファンド)に象徴される投資信託で、45.5兆円から55.6兆円へと10.1兆円増、構成比は0.4%ポイント上昇した。 対外証券投資も29.6兆円から36兆円へと6.4兆円増、構成比は0.3%ポイント上昇した。総じて、家計部門の海外株式への関心が一段と強まったと分析できる。 一方、円貨性資産に目を向けると、外貨性資産と同じように株式および投資信託が増加をけん引し、前者は272.2兆円から285.4兆円へと13.2兆円増、構成比が0.4%ポイント上昇。後者は66.5兆円から75.4兆円へと8.9兆円増、構成比は前者と同じく0.4%ポイント上昇した。 なお、株式・出資金の構成比は3月末時点の資金循環統計で過去最高の13.7%を記録し、今回9月末時点に至るまで13%台の高水準を維持している【図表3】。 新NISAの導入後は外貨建て資産への影響が注目を集めてきたが、前出の日本証券業協会による利用状況調査によると、NISA買付額のうち国内株式は4割を占め、成長投資枠の買付額に限れば9割以上が国内株式となっている。 新NISAを利用した外貨性資産の購入=円売りが円安を促し、その円安が海外投資家による日本株への投資を促している側面もあり、そこまで含めて総合的に見れば、政府の施策は日本の株式市場の堅調ぶりに寄与していると言える。