観たのに「思い出せない…」映画のパンフレットの価値 高いけど忘れっぽい人には“タイムカプセル”
『不適切にもほどがある!』との意外な関係
“ある男”窪田正孝さんの恋人役を演じていたのが、河合優実さんです。顔を見た瞬間に、「あ! 『不適切にもほどがある!』に出ている純子だ!」と思いました。TBSドラマ『不適切にもほどがある!』の主人公・小川市郎(阿部サダヲ)の娘、純子は高校2年生ですが、河合優実さんは今23歳。2022年公開の『ある男』でラブシーンも演じているのに、「演技とはすごいものだなあ」と思いました。 そして、『ある男』の子役、安藤サクラさんの中学生息子役にも注目しました。顔を見て、「絶対どこかで見たことがある」けど、思い出せない。映画のエンディングでは俳優名しか出ていなくて、役名とリンクしない。パンフレットを見ると、坂元愛登さんという名前でした。これで検索してみたら…。こちらも『不適切にもほどがある!』で河合優実さんを好きになる中学生、向坂キヨシだったのです! もうびっくりです。 実は『不適切』の最新回を録画で観て、直後に映画『ある男』を観たんですよ。なのに、気づきませんでした。 『ある男』で、中学生と、ラブシーンまで演じる大人の女性を演じていた2人。映画撮影から3年後のドラマでは、河合優実さんは高校生役で、坂元愛登さんは成長してすっかり大人の顔立ちになって、キヨシは純子を好きになってしまう。その2人が『ある男』に出ていたということも、パンフレットを手元に置いていたから、初めて分かりました。 僕は映画評論家ではありません。ただ映画が好きで、時々パンフレットを買っているだけです。ただ、そのパンフレットはずっと取っているので、年が経つにつれてどんどんたまっています。今日スタジオに持ってきたのはごく一部です。そのパンフレットが手元にあると、時間を超えてこんなこともできるのか、と思いました。まさか『ある男』が、ドラマ『不適切』にこんなにリンクしていたとは。
高いけど…パンフレットは面白い
『ゴジラ -1.0』のパンフレットもここにあるんですが、いっぱい線が引いてあります。この番組で以前採り上げた時、パンフレットを見ながら、僕が気づかなかったところを補ってお話をしました。昨日(3月11日)、アカデミー賞を受賞しました。候補作だったのでこのパンフレットを会社に持ってきたら、RKBテレビの情報番組『タダイマ!』のMC宮脇憲一アナウンサーが熟読していました。番組が終わった後「すごく役に立ちました」と言ってもらえたので、買った甲斐がありました。 映画館という場で観るのが好きなのですが、サブスクでももう一度観られる。映画のパンフレットがあればさらに深まる。高いからいつもは買えないと思いますが「もう一度観たい」「将来また観てみたい」「胸を打たれた」と思う映画を忘れてしまわないための記録として、パンフレットはいいなあ、と思いました。でも、2回目をサブスクで観たのに、刑務所室内の雨に気づかない、非常に残念な私でした。
神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。報道部長、ドキュメンタリーエグゼクティブプロデューサーなどを経て現職。近著に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』の制作過程を詳述した『ドキュメンタリーの現在 九州で足もとを掘る』(共著、石風社)がある。最新作は80分のドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』で、3月30日午後2時、TBSドキュメンタリー映画祭・福岡会場で上映予定。