最高スコアで“欲張りゼウス”が完全復活!鈴木たろうが掲げる新たな目標も「全部トップ。きれいなことは言えないから(笑)」
溜まりに溜まった鬱憤の一部は晴らせただろうか。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」赤坂ドリブンズの鈴木たろう(最高位戦)は、「ゼウスの選択」と呼ばれる独創的な打牌選択でファンを魅了し続けてきたが、チームは初年度の優勝以来、思ったような成績が残せておらず、個人成績も低迷していた。それが昨期、チームは準優勝、個人では歴代最高スコアを叩き出し、レギュラーシーズンでは+211.2の7位に入った。ようやく“ゼウスらしさ”を取り戻したたろうが掲げる目標は「全部トップ」。なんともストレートな表現は、実に欲張りゼウスらしかった。 【映像】鈴木たろう、最高スコア記録更新の瞬間 ―赤坂ドリブンズとしては久々に好成績を残せた。たろう選手は個人最高スコアも出した。どんなシーズンだったのか。 鈴木たろう(以下、たろう) トータルで見たら悪くなかったかな、という感じですかね。ただ序盤、自分は何もできない展開で苦しくて。そこからトップを量産というか、最高得点を取れた。あの瞬間ですごく勝って戻せたので、結果的に結構プラスを取れたので良かったかな、とは思います。 ただ、ポストシーズンに入ってからはチームの足を引っ張ってしまった。その分、みんなが頑張ってくれたことで、何とか準優勝でした。僕がもっと成績を残せればポストシーズンで優勝もあったのかな、というところでしたので、そこは悔やまれます。 ―個人最高スコアのトップまで、雰囲気はイマイチだった。 たろう 我々の世界は勝負の世界なので。やはり勝っている時は気分が良いし、負けている時は気分が悪い。別にネガティブになっていたわけではありませんが、負けていると、どうしても気分は落ち込むし、晴れ晴れとした気分で日常生活も送れない、みたいなところはあります。成績が良いと日々、勝った喜びを噛みしめながら良い気分で生きていける。単純ですね。だから、負けている時は落ち込んでいる感じですね。 ―最高スコアは、自身でもそんなスコアとは思っていなかった。 たろう そもそも黒沢(咲)さんの記録を抜けるなんて思っていなかったです。まさか自分がそんな記録を抜いてしまうだなんて。やっているうちは、「今シーズンのハイスコアだな」とは思っていましたが、歴代最高とは…。 終わってみたら、いろいろな人に「歴代スコア」と言われて嬉しかったですが、選手として打っている時は歴代スコアとか、気にしないじゃないですか。たまたま出るものなので。ただ、「少しでもポイントを持ち帰ろう」と思って打っていたので、終わってみて、インタビューで「歴代スコア」と聞かれた時に、「たぶん、ダメだったんだろうな」と思ったら、かわせていました。ダメだというか、「さすがにダメだろう」と思っていたので、びっくりしましたね。 ―イメージででは黒沢選手は打点が高い、攻撃的な面でいうと佐々木寿人選手の名前が出てくる。 たろう たしかにイメージはそうかもしれませんね。でも僕は寿人よりも圧倒的に攻めている。イメージで語られて、今まで悔しい気持ちはありました。「俺の方が攻めてるじゃん」みたいな。そのイメージが良いかどうかは別として、記録を残せたという意味では嬉しい。この記録は一生抜かれないかもしれないし、初日で抜かれるかもしれない。僕はあまり気にしてはいませんが、ファンの人が喜んでくれるので、なるべく維持できると嬉しいです。 ―チームは園田選手も好調だった。新しく2人(浅見真紀・渡辺太)を迎えて、その2人の戦いぶりはどうだったのか。 たろう 十分、満足しています。ちょっと上からになってしまいますが、期待していた実力を出してくれた。選手はみんな、「こんなもんじゃない」と思うでしょうが、内容も含めて期待以上のものはあったと思います。 ―各選手から、昨シーズン「Mリーグの麻雀が変わった」との意見がある。その影響のひとつとして渡辺選手の名前を挙げる選手が多い。 たろう 間違いないと思います。それは感じています。みんなMリーグルールはあまりやったことがなかったので、探り探りやっていたところはあったと思いますが、厚かましいというか、自信があるというか。僕もそうですが麻雀に自信がある選手は結構、自分の麻雀を貫いていたところがありましたが、それほど自信がない選手は視聴者の声におびえながら打って、引き気味になる。そう思っていましたが、太が「これはいいんだよ」と明言したことによって、「太が言うんだから、これは押してもいいんだ」と世論も変わった。それによって、周りの空気を感じて押せなかった人が押せるようになっている、みたいなところがあると思います。 結局、空気感というか視聴者の声は大きい。その声におびえてしまうところは多少あると思います。そういう意味で、視聴者の声が変わって押し気味の選択も支持されるようになったので、みんなが押せるようになったのかな、というイメージです。 ―素人的な考えだと、それがMVPを取った選手だと分かりやすいが、レギュラーシーズンのポイントだけなら、渡辺選手は+36.2の個人12位。それ以上に他の選手に与える影響が大きかったのか。 たろう 理屈だと思います。太のコア層に受ける、麻雀がうまい人から支持される、雀力が評価されている太が言うことによって、一般の人には正しいものだと聞こえやすい。例えば、他の人が言っても、「それは本当かどうか分からない」という人でも、太が言うなら「信じざるを得ない。信じてみよう」という人が多いんだと思います。言葉に説得力を持っている人だから、ファンを含めて全体の空気を変える力を持っている。ネット麻雀最強で、それくらいの力を持っている、と思っています。 ―他チームではあるが、長く番組で共演していた中田花奈選手が入り、対戦もあった。感じたところはあるか。 たろう 正直、入る前は「大丈夫かな」という不安はありました。やはり、麻雀ファンの声は厳しい。プロの世界は厳しくて当然だと思いますが、厳しい声に「潰されてしまわないかな」という気持ちがありました。おこがましいかもしれませんが、そういう心配があって「大丈夫かな」と思っていましたが、やってみると、どんどん成長しているし、「あ、こういう麻雀を打てるんだ」とか、感心というか「あ、すごいな」という局面をたくさん見ました。 何をもって完璧かは分かりませんが、まだまだ成長できると思いますので、「僕ごときが心配してもしょうがないな」と感じました。 -新シーズンの目標は。 たろう 目標は全部トップを取りたいですよね。目標を言ったら、キリがないので。どうやって言うのが綺麗に聞こえるのか、という話なんですが(苦笑)。でも僕はあまり、きれいに聞こえることを気にしていないので、まぁ「全部トップを取るつもりで頑張ります」としか言えません、くらいの気持ちです。 ―チーム2回目の優勝はU-NEXT Piratesに先を越された。 たろう 悔しいです。パイレーツに2度目の優勝をされたのはめちゃめちゃ悔しくて、すぐ逆転しないといけない。今年は並ぶまでしかできませんが、今年は何とか並んで、来年は逆転したいな、という気持ちではいます。 ―間近で優勝されたという意味では、ライバル視はあるのか。 たろう ライバル視というほどではないです。少し毛色が似ているチームではありましたが、パイレーツに関しては2人、昨期の新加入選手(鈴木優・仲林圭)のコミュニケーション能力というか共感力というか、スター性を持っている2人が入ったことによって、堅い融通が利かなそうなカラーが、あちらだけ良いカラーに変わってしまったんですよ。 僕は良いかな、とは思いますが、あちらはファン受けするカラーになってきた。「そっち路線で行くなら、こっちはこっち」と、相変わらず融通が利かないチームで頑張って行こうかな、と。 -変わる必要はないが、浅見真紀選手が入られたことで雰囲気が変わった。 たろう 真紀は「みんなの母」みたいな感じでまとめてくれるし、ファンに共感を得られるような話や雰囲気作りをできる人なので、そのあたりはめちゃくちゃありがたいです。 ―目標は、取れるものは全部取る。 たろう 融通が利かないですね。本当にきれいなことが言えない(笑)。 ―浅見選手が「みんなの母」というのが画面越しで伝わる。渡辺選手は、控室でどんな感じなのか。 たろう 太は、発した言葉が全部重い。そこまで言葉を発するわけではありませんが。言葉を結構選んでいるかなとは思いますが、慎重なタイプだし、いい加減なことは言いたくないタイプなので、言葉をしっかり選んで正論だけを言う、みたいなイメージですかね。 ―その中で、園田選手を含むみんなで麻雀の話をするのか。 たろう 麻雀の話はめちゃくちゃしますね。麻雀の話しかしないくらい。たぶん、太も賢も、特に僕なんて麻雀しかしてきませんでしたから、基本は麻雀の話。「どっちが得か」みたいな話が、3人で話す時はメインですかね。あまり冗談はないですね。世間話も多少。麻雀の話が8割、世間話が2割、みたいな。 ―麻雀の話は白熱するのか。 たろう 白熱するほどぶつかりませんね。「あ、こういうことね」と相手の思考がお互いに分かってしまうから。だから、お互いに分かっていることを確認し合う。片方がこう言ったら、「あ、そうだよね」という話になるし、たまたま打牌が違ったら「こういう切り口で考えたら、どう?」とか。要は、そんなにみんな的外れなことはしないので、「たぶん、こういう考えだよね」「それが入ると、こっち寄りになるかな」とか。ぶつかれないというか、結局みんな理屈が立つのでぶつからないんですよね。お互いのポイントや切り口が分かるし、確認し合う会話が多いです。 ◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。 (ABEMA/麻雀チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部