熊本市、少子化対策へ本腰 AI活用で婚活サポート、「誰でも通園」秋に試行 「こども局」の2024年度予算を拡充
熊本市は2024年度、人口減少の抑制を目指して子ども関連の施策を強化する。発足2年目となる「こども局」の予算を拡充し、出会いの機会を提供する結婚支援センターの設置や、親の就労の有無に関係なく預けられる「こども誰でも通園制度」の試行を計画。結婚から子育てまで、市民のライフステージに応じた支援体制をつくる。 市の人口は20年の国勢調査で73万9千人となり、戦後初めて減少。市は今年4月からの第8次総合計画(24~31年度)で、人口減少対策を最重要課題と位置付けた。これに伴い、24年度のこども局の予算を前年度比37億円増の620億円とし、新規を含む153事業に取り組む。 少子化対策の目玉事業が、結婚支援センターの設置だ。AI(人工知能)が相性の良い相手を紹介するマッチングシステムを導入し、出会いから成婚までサポートする。登録時にマイナンバーカードで本人確認することで「民間サービス以上の安全性・信頼性の確保を目指す」(こども局)という。当初予算にシステム構築や民間事業者への委託費など3600万円を計上。開設は来年1月を予定する。
市の生涯未婚率は上昇を続けており、20年は男性20・7%、女性17・4%。昨年の市民アンケートでは、結婚を希望するものの、相手に巡り合わないと答えた独身者が46・4%に上った。全国の自治体に広がる「官製婚活」には批判もあるが、こども政策課は「結婚を望む全ての人に、安心できるサービスを提供したい」とする。 子育て環境の改善に向けた初の取り組みが「こども誰でも通園制度」。国が26年度から全国展開する方針で、市は9月をめどに保育所など8カ所程度で試行する。親の就労を前提としないことが特徴で、育児負担の軽減や孤立防止を図る。 対象は、市内在住の生後6カ月から2歳までの未就園児。利用料は1人1時間300円、利用時間は1カ月10時間をそれぞれ上限と設定した。「本格スタートに向け、課題を洗い出したい」と保育幼稚園課。 ほかに、専用アプリによる子育て情報の発信や、子ども食堂がない空白地域での開設支援を計画。大人に代わって家族を世話する「ヤングケアラー」の支援センターを新設し、専門相談員を配置する。
市は24年度に「市こども計画(仮称)」を策定するため、市民との意見交換の場を設けている。4月下旬の会合に参加した熊本大医学部保健学科4年の増留光心さん(23)=中央区=は「子育てサークルは平日に開かれることが多く、共働きだと参加が難しい。交流の場を増やし、子育て世代に情報発信してほしい」と大西一史市長に要望した。 こども政策課の那須光也課長は「若者が希望を抱けるまちを目指すため、安心して子どもを産み、育てることができる環境を整えていきたい」と話している。(臼杵大介)