F1マシン、かくあるべし。空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイが語る理想と現実|インタビュー
マシンのサイズがカギ
2022年に導入された現行レギュレーションは、マシンが発生させる後方乱気流を抑え、接近戦を増加させることが目標だった。ただ導入3年目を迎え“ダーティーエア”の問題が再び指摘されている。 そんな中でニューウェイは、自身の原点である“マシンのサイズが重要だ”という視点に立ち返った。 「空力面では、特に2022年のレースではマシンが非常に接近し追従できていた。現在もまだ接近して走っている」とニューウェイは言う。 「しかしマシンは本当に大きくなった。マシンは速く、そして重くなった。それは少し残念に思う」 「長年にわたって言えることは、F1マシンが象徴するモノは何でも、(市販車の)ショールームで流行る傾向があるということだ。パドルシフトでのギヤチェンジは、明らかにF1で最初に採用されたモノだ。そして現在は市販車でもかなり普及した」 「80年代にターボチャージャー搭載マシンがF1に登場すると、市販車にもターボチャージャー搭載車が増えるという傾向があった。カーボンファイバー製のウイングを見れば分かるように、今、高速道路で見かけるスポーツカーには、飛び出したり下がったりするウイングがついている。一般的なモノになったのだ」 「現在、エコロジーや自動車が地球に与える影響をいかに減らすかについて、当然のことながら多くの議論がなされているのは間違いない。それに付随して、化石燃料を使わず、バッテリーや水素によって排出ガスを減らすことに執着する傾向がある」 「しかし私にとってより重要なのだ、クルマが使うエネルギーの量だ。なぜなら、それがカギだからだ。もしクルマが大量のエネルギーを使っていても、そのエネルギーがどこから来ているかは関係ない。たとえ風力発電で得られたモノであっても、二酸化炭素の排出がゼロになるわけではない」 「だからF1がその逆を行き、より小さくより軽く、より空気力学的に効率的なマシンに移行するチャンスはある。私が主張したいことはそれだ」 「そうすれば道路を壊したり、くぼみを生んだりする3トンの(荷重を発生させる)モンスターたちから、潮流を変えることができるかもしれない」
Jonathan Noble